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新しい朝 #1 side T

目が覚めると...そこには...キラキラと射し込む眩しい朝日と...端整な顔立ちの寝顔があった... よく寝てる...... 葉祐が僕より寝坊するのは...本当に珍しい... 起こさないように頬に触れると... 「う~ん...とうま......」 僕の名前を呼んで…その後はよく聞き取れず、何やらムニャムニャ言っていた。 寝ぼけているんだ...可愛い...... 思わず顔が緩んだ。 布団から腕を出し、そのまま腕を空に上げ、自分の手のひらを裏返したり元に戻したり、指の間を広げたり閉じたりして見つめた。真っ白で...自分でも情けないぐらい細い手... でも...... 葉祐は昨日...この手が綺麗だと言って...何度もキスしてくれた。とても嬉しくて...ついつい思い出し笑いをしてしまう。 腕を布団の中に戻して、今度はお腹の上に両手を乗せた。瞳を閉じると、葉祐と初めて一つになった日のことが蘇った。 あの時も...僕から手を引いたんだっけ...... 昨晩、部屋に戻ると、背後からふわりと抱きしめられた。葉祐が僕の首筋に顔を埋める。 「ごめん...冬真...ごめん。しばらく...このままで...ごめん...」 葉祐は僕を抱きしめ...謝りながら...泣いていた。 女将さんから、葉祐が僕の料理を食べたいと思っていること、それを口に出すと僕を追い詰めることになると考えていて、そう思った自分を責めていることを聞いた。 バカだなぁ...言ってくれれば良いのに。 「海野さんみたいな友達と出会えて、冬真君は幸せね!でも...ちょっと過保護かしら?冬真君のお料理が食べたいなら、一緒に作れば良いのに...」 女将さんはそう言った。 本当...女将さんの言う通りだよ… 「ねぇ?冬真君?海野さんは鶏の唐揚げが食べたいみたいなの。唐揚げなら下味だけやってもらえれば、手伝いやすいから、一緒に作ってみない?海野さんにサプライズ仕掛けましょ?」 満面の笑顔の女将さんの申し出を僕は快諾した。 こんなことも出来るよ!って驚かせたいし... 何より... 葉祐を喜ばせたいもん。 女将さんと僕のサプライズに感激した葉祐の中には、たくさんの感情が渦巻いている様だった。一番は嬉しい気持ちと感謝の気持ち...それは間違いないはず... だけど...... 別の感情も生まれていたんだよね... 嬉しい気持ちから派生した...僕を欲しいという気持ち...そして...それを戒める気持ち。 色々な気持ちが渦巻いて...持て余して...整理がつかないんでしょう? だから...僕を抱きしめ...謝りながら...泣いているのでしょう? 葉祐...泣かないで... 僕は確かに被害者になった。奪われたものもたくさんある。 だけど...... 下を向かないでいいって教えてくれたのは君だろう? 僕は大丈夫。僕のことで...もう苦しまないで...... 僕は立ち上がり、葉祐から離れた。 そして... 帯をほどき...浴衣から両袖をするりと抜いた......

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