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1月16日 #1 side Y

1月16日 この日は俺達二人にとって、いや...どちらかと言うと、俺にとって最も重要で大切な日で... 何日も前からワクワク...ソワソワ... そして...考えすぎて...うわの空... 1月16日 この日は冬真の誕生日。 プレゼントはもう決まっている。 喜んでもらえるかな... 1月16日 頭を悩ませているのは当日のこと。 レストラン...予約しようかなぁ... でも...きっと...聞けば言うんだ... 「家で良い」って... 確かに家なら安心だけど... それじゃ...普段とあまり変わらない... スペシャルな日なのに... 小さいケーキにろうそく1本だけ立てて... 俺が代わりに吹き消すだけの、寂しかった去年の誕生日... あの時... 自分の誕生日って分かってたのかなぁ... 今年の1月16日 きちんと二人で祝える初めての誕生日。 だから... 最高の一日にしたいんだよ... 「ねぇ......?よぅすけ...」 ソファーで並んで座る冬真が俺を呼ぶ。 「あっ?えっ?」 「だいじょ...うぶ...?」 「うっ...うん...」 「ねぇ......みて...」 冬真は1枚の年賀状を差し出す。見れば、それは斎藤からのもので、娘の真生ちゃんの可愛らしい姿がそこにはあった。 「おお...きく...なった....」 「うん!大きくなった!『もうすでに口うるさくて仕方ない』って書いてあるよ。」 正月の祝い酒に酔いしれた俺達は、届いた年賀状を一日遅れで見ていた。 「げんき...よかった...」 冬真は微笑んだ。穏やかに...美しく... 「冬真...あのさ...」 「うん?」 「再来週の土曜日のことなんだけど...」 「どよう...び...?」 「うっ...うん...」 冬真の瞳がカレンダーの探し、再来週の土曜日を映す。 「あっ......じゅうろく...にち...」 「せっかくだから...どこかでお祝いする?」 「ううん......いえで...ふつう...」 「でっ...でも......」 「ぼく...よぅすけ...いる...それだけ...で...じゅうぶん...だから...いえで...ふつう...」 冬真は瞳を閉じ、胸の前で軽く両手を重ねた。 「よぅすけ......」 「うん?」 「よぅすけ...うまれて...きてくれて...ありがと...ぼく...と...であって...くれ...て...ありがと...いつもそば...いてくれる...かみさま...かんしゃ...」 冬真はまた微笑む。慈愛に満ち溢れたその笑顔は... この上なく美しく清らかで... 一瞬...言葉を失った。 そんな風に言うなよ... 感謝するのは...こっちの方だよ... それに... そんな風に微笑まれたら... 俺は...為す統べもなくなって... お前の美しさに立ちすくむ、ただの平凡な男に成り下がってしまうんだ。 そして... 駄々を捏ねる子供のように... お前を求めてしまう... 嫌だよ...そんなの... だって...格好悪いだろ? 冬真... 俺はいつでも冬真の前では、格好良い男でいたいんだ。 だからこそ...俺は誓う... 絶対に最高の一日にする。 2016年1月16日を...

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