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嫉妬と暴挙と制裁と #1 side K ~Kosuke ~

葉祐を嫉妬に狂わせるその問いを、冬真は至るところでされていることを俺は知っている。病院の帰り道、車中で元気がないと冬真はおおよそ、その問いを投げ掛けられていた。 『彼女...いるんですか?』 その問いに対して、冬真はどう返して良いのか分からず、戸惑い、俯いてしまう。正直に答えることに、冬真自身は何の迷いもない。だが、それによって、葉祐が偏見や好奇の目に晒されてしまうことを何よりも恐れている。確かに客商売の葉祐にとって、変な噂は致命的だ。俯く冬真を人々は照れたのだと勘違いし、その美しさと儚さと可愛らしさにますます彼の虜になった。 『ほおって...おいて...ほしい…』 冬真は帰りの車中、何度もそう呟いた。 そんな冬真を葉祐はどれぐらい理解しているのだろうか...? 『恋人はいますよ。』 葉祐は冬真の口からその言葉を出るのをずっと待っている。だが、それで終わるはずもなく、その先を根掘り葉掘り聞かれることを、冬真は経験上知っている。ずっと営業畑にいた葉祐なら、上手い切り返しも出来るだろう。しかし、葉祐に再会するまで人の目に晒されることもなく、森でひっそりと暮らしてきた冬真には、それはかなり難しい高度な技だ。失言をし、葉祐に及ぼす影響を考えると何も言えなくなるのだろう。 嫉妬に狂った葉祐は、そんな冬真の気持ちも分かるはずもない。だから昨日、葉祐は暴挙に出た。冬真は昨日、店の手伝いをした。最近のEvergreenの来客数は、タウン紙の効果もあってかなり増えていた。こと、土日に関しては猫の手も借りたいほどだ。冬真が葉祐を助けたいと思うのは、至極当然のことだ。しかし、冬真が店に出ると、店全体が色めき立つ。昨日もきっと、返事に困る問いかけを何度もされたに違いない。葉祐はその度に、嫉妬の渦に飲み込まれてしまったのだろう。あんなに大切にしている冬真を、葉祐は抱き潰した。パジャマの襟元や袖口からチラチラと見える花びらのような赤い痣は、とても痛々しく見えた。冬真が望んでした行為なら何も言わない。だが、これは恐らく一方的なもので、葉祐の愛情という名のもとの暴力に等しい。こんなになっても冬真は葉祐を庇い、葉祐を想い、斎藤君に知恵を求める。 少しあがる息を何度も整えながら、一生懸命電話口で語る姿は、健気過ぎて涙が出そうだ。こんなに優しい、思慮深い冬真に対し、暴挙に出た葉祐を我が子ながら許せなかった。 冬真の肩口を軽く叩く。 「なぁ、冬真?電話代わって!」 そう言う俺を冬真は不思議そうに見つめ、電話口で俺に代わる旨を斎藤君に伝え、受話器を差し出した。 「あぁ!斎藤君?久しぶり!元気かい?悪いんだけど...これから会える?今から車飛ばして、二人でそっちに行くから...良いかな?ありがとう!うん....何日か東京に滞在しようかと思ってる...うん......本当?悪いけど...そうしてもらえると助かるよ...」 冬真は驚いて目をぱちぱちとさせた。そんな彼の頭を撫でた。 大丈夫、心配するな。悪いようにはしないから...

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