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覚悟 #2 side Shun
車を走らせる
愛する人の元へ
心が躍る
だって...今日から...
彼のそばにいられるのだから...
2か月ほど前、初めて葉祐さんを訪ねた。
この地をとても気に入り、本業に力をいれるべく、新天地を探していた俺に、葉祐さんは、この地へ引っ越して来ないかと勧めた。冬真さんへの俺の想いに気が付きながら。普通なら恋敵をパートナーの側に置くことなんて考えないだろう。だが、彼は各々の主観を捨て、二人が愛する冬真さんのことだけを考えようと言った。冬真さんにとって、友人である俺と自分のせいで会えなくなるのは不本意だからと。
『これはあくまでも俺の考えです。強要はしません。あなたの心のままに決めてください。』
葉祐さんのその言葉について考える。二人の近くに住み、叶わぬ恋の相手の姿を見続けることと、冬真さんの姿を何年かに1度見るだけと、どちらがツラいのだろうか...
どちらにしても相当ツラいに違いない。
しかし、そのネガティブな考えを一蹴させたのは、やはり愛しい人の表情だった。食事を上手に食べられないと言って、泣き出しそうになった表情。一緒にデザインをした時に見せた彼本来の美しい笑顔。昼食も一緒にとせがむ幼子の様な表情。
全ての表情に心が鷲掴みにされた。
やっぱり...
冬真さんと離れるなんて...
この人の笑顔が見れなくなるなんて...
考えられない。
「葉祐さん?」
「はい。」
「私...自宅と工房をこちらの方に移そうかと思います。もしも、こちらの物件を取り扱っている地元の不動産屋をご存知でしたら、ご紹介願いたいのですが...」
「地元ではないですけれど、こちらの物件を取り扱っている会社に知人がいます。とても信頼出来る、素敵な方です。きっと、相場よりも格安で販売してくださると思いますよ。」
葉祐さんはそう言うと、どこかへ連絡を入れた。
一旦帰京し、翌週、葉祐さんのお店の休前日に合わせ再訪した。翌日、二人の自宅に初老の男性が現れた。見覚えのある人だった。どこかで会ったことがあるのに一向に思い出せなかった。その人は葉祐さんにハグをし、冬真さんにもハグをした。しかし、冬真さんへのそれは、ほとんど抱擁に近い。
「良いんですか?」
心配になり、葉祐さんに尋ねた。すると彼は、
「ええ。あの方は特別なんです。」
と微笑んだ。
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