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溢れる思い #1 side Y

リビングに着信音が響いた。 1か月~1か月半のスパンで掛かってくるその人からの連絡と訪問を冬真はとても楽しみにしている。 「はい。分かりました。今度の水曜日ですね。いつもお気遣いありがとうございます。いえいえ、こちらこそ...こんなことでしか恩義を返せなく、本当に心苦しいです。はい。人数と内訳はいつもと変わらず...」 そう言ったところで、冬真が急に俺のTシャツを引っ張った。視線を落とすと、電話に出たいという素振りをしていた。冬真がそんなことをするのは珍しいので、望み通りスマホを差し出した。 「おじさま...とうまです...はい...ぼく...げんき...おじさま...おねがい...」 冬真は突然、電話の主に二つの願い事を切り出した。それとなく話を聞いていると、一つはすんなり通ったようだが、一つは何か理由があって通らなかったらしい。 「はい...じゃあ...にんずう...へんこう...おじさま...むりなおねがい...ごめんなさい...」 そう言うと冬真は、少しだけ寂し気な表情でスマホを返した。俺は丁重に挨拶をし、通話を終えた。 「冬真。」 冬真を後ろから抱きしめ、耳元で囁く。 「この間の話...分かっていたんだ。」 「うん...」 「小泉さん...どうしてダメだって?」 「いえが...よごれる...おじさま...ふほんい...ぼく...へいき...いった...でも...ダメ。みせなら...だいかんげい...」 「そっか。小泉さんは、冬真や俺のことを考えて言ってくれたんだよ。」 「どうしたら...いいのかな...」 しばらく沈黙が続いた。 冬真は真剣に考えていた。 それがちょっと...いや、スゲー悔しかった。 だってそれは...航のことだったから... 悔しいから俺は...背後から冬真にちょっかいを出す。 首や頬にキスをしたり。 だけど、そんなの全く気にならないらしい... 悔しさがMAXになろうかという頃、 「あっ!」 妙案を思い付いたのか、冬真が突然声を上げた。それからこちらに振り向き、向かい合う形になった。 「いいこと...おもいついた...」 冬真は美しく、かつ嬉しそうに微笑んでいた。それがまた悔しかった。未熟者で独占欲の強い俺は、それが表情に出ていたらしく、冬真の表情は徐々に曇っていく。 「ようすけ...」 「別に。何でもないよ。」 「おこってる…」 「怒ってない。ただ...航に冬真を取られたみたいで...ちょっと…」 冬真は一瞬、惚けた様な呆気に取られた様な表情をしたが、すぐに笑顔になった。 「どうしたら...ごきげん...なおる?」 「別に...機嫌が悪いワケじゃないし...」 「どうしたら...ようすけ...えがおになる?」 「キス100回...してくれたら。」 半ば冗談。冬真をちょっと困らせるためにそう言った。だけど...冬真は満面の笑みを浮かべる。 「じゃあ...ちゃんと...かぞえていて...」 唇から始まって、冬真は俺の至るところにキスを落とす。頬、瞼、手...10回終わると、冬真は優しい笑顔で俺を見つめ、手で俺の髪を梳き、また唇からキスを始めた。間もなく30回目のキスを迎えようという頃、俺は冬真を体から離した。冬真は驚いて俺を見つめる。 「ようすけ...」 「もういい...」 「でも...まだ...」 「本当にもういいんだって!」 少しぶっきらぼうに言う俺に、気遣うように冬真が言う。 「だって...」 何か続けて言おうとしていたが、それを制するように俺は冬真の手を取り、その手を自分の股間に触れさせた。そこで、冬真は全てを察知した。 「冬真...もう...」 俺の切ない声に、冬真はこの後に起こりうることを想像したようで、ぶるぶると首を横に振った。 「きのうも...した...」 「昨日は定例会だもん...」 「ていれい...って...でも...まだ...ごぜんちゅう...」 時計を見れば、まだ9時少し前... 「大丈夫!朝コースで終わらるから!」 「なに?あさコースって...」 「超最短コース。」 それを聞いた冬真は一瞬、怯んだ様子を見せた。俺はそこを見逃さず、冬真を抱き上げ寝室へと運ぶ。 「ほんとう...ほんとうに...あさこーす...?」 「うん。うん。」 俺は逸る気持ちを押さえ、冬真にキスを落としながら寝室へと急ぐ。 許せ、冬真! 朝コースは朝コースでも『休日朝コース』だ。 超最短でどれくらいかなぁ... 後でスゲー怒るんだろうな... 『もう騙したなっ!』って... でも... 溢れる思いは止められないんだ...

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