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2.Looks boy(少年のようだ)

「では早速、あなたにお会いしたいそうなのでご紹介致しますね」 「えっ、今か…?」 「ええ。丁度良いことに、今お越しいただいているのです」 さては喧嘩したという話題を引き出したのはここへ繋げるためだな。と、白島はカウンターの奥へと下がる桜野の背を見ながら悪態をついた。 元パートナーよりも長い、三年と少しの付き合いになるとお互いの腹の内はある程度は読めるようになる。 「こちらです」 にこやかに出てきた桜野の後ろから黒く小さな影が現れた。 「あ?」 影は一歩前に出ると、その丸い双眼をじっと白島に向ける。その姿を見て白島から怪訝な声が漏れた。小さな彼はフード付きの黒いポンチョを頭からすっぽりと被り、ショートパンツの下からは膝小僧が見えている。 身長は桜野の腰程しかない。 「なんのつもりだ……?桜野さん……?」 これが冗談というのなら思い切り笑い飛ばしてやりたいが。桜野はドッキリ大成功だとも言いたげな満面の笑みだ。 「この方が私が紹介する貴方の新しいパートナーです」 白島はゆっくりと近づき小さな男のフードを片手で払った。 露わになったのはまだあどけない表情の残る朱のさした頬に黒目がちで大きな吊り目の瞳、ギュッと噛み締めた小さな唇、黒く無造作な髪が白く柔らかい皮膚を覆い、年相応のいかにも幼い風貌だ。 「子どもじゃねえか!!!」 「そうですねえ…」 「そうですねえ、じゃないだろう!俺に子守をさせる気か?!」 少年は黙ったまま動かず白島を観察している。その視線を感じながら、ただただ困惑していた。桜野はこの手の仕事に関して笑えない冗談をつくような男ではない。 運び屋という仕事で飯を食らっている白島にとって、いくら仲介屋の申し付けでも遊び半分で出来るものではないのだ。 「いやぁ、私も驚いたんですけどねえ」 桜野が間延びをした口調で続けた。 「彼、もう成人してるんですよ」 「は……はぁ?」 まだまだドッキリが続くのか?と、白島は己の臍の辺りまでしかない男に恐る恐る話しかける。 「お前、いくつだよ…」 一拍を置いて、声変わりのしていない少年の重く低い声音が漏れる。 「21」 「うそつけ!」 この見た目で白島と5歳しか変わらないのだ。どう見ても、多く見積もっても10歳くらいだろうに。 運び屋がこの道に足を踏み入れてからというもの、現実とは思えない体験を数々としてきたが、今日ほど滑稽だと思った日はないだろう。 「まあまあ、思う所は沢山あるでしょうが。物は試しに一度組んでみてはいかがです?それから判断しても遅くはないと思いますよ」 「おいおい…」 桜野は少年の側から一旦離れるとカウンターの裏まで戻り、いつもの封筒を取り出した。そして呆然としたままの白島の隣まで戻ると肩を叩いて耳打ちをする。 「本人から直接お話を聞いた方がいいでしょう。彼…凄腕ですよ」 新しい相棒だろうが子どもだろうが21歳だろうが、ひとまず今日の仕事にありつかなければならない。運び屋は半信半疑で、封筒を受け取った。

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