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第5話

潤二も小杉山と同様、高校時代の同級生だった。 現在は俺と同じ会社に勤めているにはいるが部署が違うので偶然廊下で出会う、ということは滅多にない。 故に二人が顔を合わせるのは休憩時間に集まるこのレストランでの昼食ぐらいのものなのだが、それにしても高校を卒業しても当時の旧友と昼飯を共にするというのはどうも進歩が無い気がして一人自嘲気味に笑う。 俺たち三人は高一の頃に同じクラスになり、次の年のクラス分けで小杉山は文系クラスへ、俺と潤二は理系クラスへと進んだのだった。 潤二とはその後高二、高三と結局高校生活全てを同じクラス内で過ごし、大学こそ別々ではあったがどういう訳か就職先は偶然にも同じでこの社内で再会することとなった。 本当に『偶然』とは怖いものだ。 その『偶然』のおかげでこの社内にはなんと元同級生が三人も集まってしまっているのだからもはや末恐ろしくてたまらない。 ただ、小杉山と違い潤二は本当の意味での俺の友人でありそれは今も変わらない。 昔から出来も要領も良かった潤二はなるべくしてなったと言うべきか、同期ではあるが俺よりも早い時期に課長にまで昇進していた。 しかしそんな自分を彼は驕り高ぶるわけでもなく、誰とでも親しく出来る辺りそれが彼の一番の長所で皆から好かれる理由なのだろうと俺は頭の隅で思った。 レストランに着きガラスの扉に手を掛け店内を見渡すと丁度二人用のテーブルに座る潤二の姿が見える。 人を待つのが苦手と言うかせっかちと言うか、そのテーブルの上には彼が注文したであろう品々が置かれ、既に箸をつけた形跡があった。 俺の存在に気付き、箸の持っていない左手でひらひらと手を振って来る。 俺は寄り道する事無くまっすぐに潤二の元へ向かい、右手で椅子を軽く引き腰を下ろした。 「おっせぇんだよ界斗」 「遅いって…これでもメール貰ってから即行で来たんだぞ?」 さすがに旧知の仲というだけあって遠慮がない。 潤二の言葉に心外だという風に反論するが、彼の方は特別しつこく追及するわけではない様子で、目の前に置かれている白飯を口に含んだ。 良く言えばマイペース、なのだろう。 社会人となっても昔から変わらないその割り切った性格、個性溢れる独特な髪型は自己主張の強さを思わせた。 高校の時もよく髪の毛先を立たせたツンツン頭の所為で教師から整容が悪いとか何とか言われてはいたが、十年が経った今でも尚その髪型をキープし続けるとは称賛に値すると、当時の担任が今の潤二の姿を見ていたら恐らくそう言うだろう。 昔から変わらぬその様態。 そんな周りの環境の下で過ごしている為か、俺の中の時はあの頃からずっと変わらずに止まってしまっているのではないかという錯覚に陥る。 事実、俺自身の心は常に高校時代を巡り、変わることを拒み、進むことを拒絶していた。 囚われた思いは他者によって引き起こさせられたのか、はたまた自らそうあることを願ったのか。 「どうした、さっきからずっと黙ってるけど何かあったのか?顔色すっげー悪いぜ」 「そうか?そんな事…」 ない、と言おうとしたがその言葉は潤二の手が俺の額にあてがわれると同時に喉奥に飲み込まれた。 いきなりのことで咄嗟に避けようかと思ったが、潤二の顔がいつに無く真剣なものだったので、俺は拒むことも忘れてじっとしていた。

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