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第12話
社内の個室にある印刷室に着き、印刷機の電源のスイッチをカチッと入れる。
独特の機械音が静かな部屋に響いた。
この部屋は印刷するためだけに作られているのであまり広くは無く、狭苦しい所なのだが、此処は大枠の窓から街中を一望するのにビルなどの障害物も無く適している上、見える景色も人工の光ばかりだがそれがまた綺麗で密かにお気に入りの場所だった。
機械の印刷準備が出来るまで暫し夜景に見とれる。
遠くで放たれる光ほど霞みかかって頼りなく見え、ぼんやりとした形に目を細めた。
田舎の実家では毎夜のように晴れた日には満天の星空が見えたのに都会では星なんて一つも見えやしないけれど、作られた星空もまた一興。
印刷準備の済んだ機械に書類を挟み、枚数を入力するとコピー開始のボタンを押した。
ふぅっと軽く息をついて軽く視線を上げると印刷室の壁に掛かってある時計が目に入る。
宏実と約束したホテルは此処からそう遠くない場所にあるから印刷を全て終えて急いで向かえば大丈夫だろう。
次々と書類を入れ替えコピーしながらそんなことを考えていた時、印刷機を見ていた視界に突如人の手がぬっと現れ、その手のひらが俺の口をガッチリと塞いできた。
「んんっ…!?」
そのまま後ろに引っ張られ倒れそうになった身体はとんっと何かにぶつかった。
頭を固定されてよく見えなかったが、恐らくそれは人の胸だろう。
頭上に俺を襲ってきた奴の顎が乗って、ゆっくりとそいつは俺に話しかけてくる。
「こんなに真面目に働いたんだからご褒美くらいくれよ」
「こ、っ…すぎ…!」
息苦しくもがきながらもその男の名前を呼ぶ。
たとえ声を聞かなくても誰だか分かる。
こんな事をする奴は一人しかいなかった。
するすると手が後ろから前に伸びてきて、片手でしゅるりと俺のネクタイを外してくる。
両手を後ろ手にとられ手首にネクタイが巻きつかれていく感覚が伝わってきた。
「こうでもしないとお前暴れて何も出来ないからな。悪く思うなよ」
耳朶を舌でペロッと舐められ、全身にざわざわっと鳥肌が立った。
手馴れた手つきで手首をぐるぐる巻きにし終えると今度はシャツのボタンに手がかかり、一つ一つを素早く弾いていく。
「やめろ小杉山!!」
口を塞ぐ手が緩んだ隙を逃さず俺は目一杯の声で小杉山に怒声を浴びせた。
でも小杉山はそんな事など気にも留めず傍若無人に行為をエスカレートさせていく。
手首を捻りながらもがいてネクタイを解こうとするものの、手首を痛めつける一方である。
小杉山の呼吸が感じられるほど近くに密着して肌蹴たシャツから見える、熟れて紅い乳首を指でキュッと摘むと耐え切れずに自然と喘ぎが漏れてしまう。
「ぁ……っ」
「エレベーターでの続きもまだだったしな。中途半端に煽られて我慢できなかったんじゃないか?」
「んな、わけ…ない」
「嘘つくなよ、界斗」
言葉に反して小杉山の指によって弄ばれている胸の飾りは触れられると痛いほどに感じてコリコリと硬くしこり、それを確認すると小杉山は嘲笑した。
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