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第6話
ーーーガチャ
「ただいま」
別に誰がいる訳でもないが自然と出てくる言葉はアイツの影響だろう。2カ月以上もこの家に帰って来ていない家主の。
いや、帰って来ていない、というのには語弊がある。
現にリビングの食卓に置かれてあるメモ用紙はおそらく今日の昼にでも、一度戻って来たアイツが残したものだろう。数日に一度くらいのペースで帰って来てはいるがほとんど直接会ってはいない。
俺はそのメモを読み終わるとゴミ箱に投げ捨て、そのまま冷蔵庫に向かう。冷蔵庫からラップに覆われた皿を取り出しレンジに突っ込んでとりあえず一言。
「メンドクセェ」
てめぇは親か。いや、あながち間違ってはいないか。5歳しか年は離れていないが、アイツは俺の保護者だ。アイツが調子に乗るから認めたくはないが、親のように隣にいて落ち着く存在であることは事実。
別に自分で自炊することはできるが、最近は面倒くさいから適当にコンビニのおにぎりで済ませたり食べなかったりしていた。
実際今日も何も食べない予定だったのだが、わざわざ作ってもらっているので食べる準備をする。
まぁ、アイツの作る飯は美味いから嬉しいのだが。
その日の夜、最近の中では1番良く眠れたが、それでもまだ足りない。眠気は収まらない。
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