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第9話

ーーー隆都side 購買の前でばったり会った四天王の西条。 その一言でこの場の空気が変わる。 張り詰めた空気。 その発生源である鈴はいつも通り無表情。だがいつもとは違う底知れぬ何かを感じる。 登校するだけで歓声を浴びるような人が、昼休みで人通りの多い購買部に居て、しかも鈴に話しかけた。谷ヶ野涼とのこともあって何かと注目されている鈴に、だ。 みんな興味を持つに決まっている。 鈴の雰囲気に飲まれ、みんな黙って様子を伺ってはいるが、会話を一言も聞き逃すまいと聞き耳を立てているのがわかる。 まったく、こんな面倒くさい場所で声をかけてくるなんて。 馬鹿なのか狙っているのか。 「なぁー、一緒に飯食おうぜ。お前と話したいことあんだよ。」 「俺にはない。」 短く拒絶する鈴。まぁ、鈴には話したいことなんてないだろうね。かなりの面倒くさがり屋だし、こんなに騒がれてる四天王なんかと関わりたくないだろうな。 というかこの鈴の醸し出す底冷えの雰囲気の中でよく言えたものだ。 「お前には無くても俺にはあんだよ。てことで来いよ。」 それが初対面の人にものを頼む態度か。流石、有名人は違うな。 そんなことを考えていると、西條が爆弾を落とした。 「な、涼の双子のニイチャン」 鈴の目が僅かに細められ、この場の空気が2、3度下がった気がする。 「俺とアイツは兄弟じゃない。」 「今は、だろ?」 それに何も返さず、西條の横を通り抜け購買部に入る鈴。 「あーあ、残念。涼のことについて一緒に語りたかったのになぁー。」 その鈴を横目に、爆弾を落とすだけ落として、そんなことを言いながら西條は購買部をあとにした。 あーあ、せめてこの空気をどうにかして帰って欲しかったな。 西條の行った方を見ている者。鈴の入っていった購買部の方を見ている者。みんな首から下の時間だけ止まったかのようにただ呆然と固まっている。 また鈴の周りが騒がしくなりそうだ。せっかく今日はいつもより少し鈴の機嫌が良かったのに。こっちが残念だよ。 「おい、置いてくぞ。」 購買部の袋を手に持ち出てきた鈴に声をかけられハッとする。 「え、ちょっと待ってよ〜!僕たちまだ買ってないよ〜!」 慌てて透流が購買部に入って行く。このやり取りに、ようやくみんなの時間が動き出す。 それに続きながら、ニコッ(黒と笑って鈴に声をかける。 「鈴、もちろん待っててくれるよね?」 それにため息をつきながらハイハイと返事をする鈴。そんないつも通りのやり取りに少しだけホッとして購買部に入った。 *

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