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第10話

購買部で昼飯買って教室に戻る。ただそれだけのことなのにどっと疲れた。まぁ9割9分アイツと会ったことが原因だが。 「鈴くん、今日は何買ったのー?」 いつものように俺の机周辺に自分の椅子を持って来て机に昼飯を広げる二人。 楽しそうに購買部の袋を開けながら話しかけてくる透流はいつも通り元気だ。隆都も先程の黒い笑顔をみる限り概ねいつも通り。 「おにぎり」 あー、面倒クセェ。購買に行くの止めるか。しばらく学校ん中歩き回りたくねぇし。 「鈴、それだけ?」 「あぁ」 「えー?足りるのー?」 「どうせ帰りにマ〇ク行くだろ」 いつも通りに接してくれているが、コイツらだってアイツが言ったことについて気になっているだろう。面倒臭く触れてこず、そっとしてくれるのはありがたい。今つるんでいるのがコイツらで良かったと思うし、コイツらなら少しくらい話してもいいかと思う。 だからといってこんな風にいろんなヤツが聞き耳立てている所で話したくもないからな。 「久しぶりだね、放課後の寄り道」 「うん!行く行くー!」 「鈴、しばらく大変だね。また動物園再開だよ。」 チラチラこちらを伺う視線があるのを見るに、既に噂が回っているのだろう。また入学してすぐの時と同じ状況に戻るのか。ほんと動物園に飼育されている猿にでもなった気分だ。 ったく面倒クセェよ。 * 昼ごはんがおにぎり二つだけだったため先に食べ終えスマホをいじっていた鈴が、ヴーッ、と鳴ったスマホのバイヴに反応した。 何かの通知を見ているのだろうが、 少し。ほんの少しだけだが柔らかい表情になった気がするのだ。 「え?彼女?」 「っえ!?彼女!?」 思わずそう聞いてしまった。 まぁー、失敗だったけど。イケメン(騒がれてる谷ヶ野涼と瓜二つな鈴ももちろんイケメン)の恋人事情なんて、みんなが聞きたがっている話しを教室でしてしまったから、クラスメイトが一斉に反応して鈴に注目してしまった。ついでに言うと、アホ(透流)がデッカイ声で復唱しちゃったし。 鈴はすっごく面倒臭そうにため息ついてる。 「あ、ごめーん。」 言ったことは取り消せないのでとりあえず謝った。 「別にいい。つか彼女じゃねぇ。」 「あ、そーなんだ。」 「ただの保護者だ。」 しかも男だ、と。その一言でクラスメイトは「なぁんだ」とでも言うかのように日常に戻っていった。 あれ?いつも無表情の鈴からすると、ただの保護者って感じの反応じゃなかった気がするんだけどなぁ。 鈴ってファザコン? *

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