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第13話
夕飯を食べ終え、風呂も済ませ、後は寝るだけとなりソファに座ってテレビを観ているとテレビが90度傾いた。いや、実際に傾いたのは俺の方だが。
「おい」
「あ?」
「あ?じゃねぇよ。」
同じく風呂まで済ませたらしい真尋が、ビール片手に隣に座り、俺の頭を自分の膝に乗せた。
いわゆる膝枕だ。
別に慣れてない訳じゃない。今までもたまにコイツにされてきたから。だが、コイツに膝枕をされると、毎回と言っていい程醜態を晒してしまうので好きではないのだ。
それに、相手が真尋だと考えるとそこまで嫌悪感は抱かないが、男同士でやってると考えると少し思うところがある。隆都や透流には口が裂けても言えねぇな。
「まぁー、いいだろ?しばらくこのままでいろよ。」
それが「しばらく」で済まないことを知っているが、俺が何を言っても解放してくれないことも知っているので大人しくそのままでいる。
何もすることが無いので、さっきまでと同様に興味があるわけでもないテレビを眺めていると、真尋の大きな手が俺の頭を撫でた。
「で?何があったんだ?」
かけられた声と手に戸惑う、なんてことは無く、「あぁ、やっぱりか。」と思う。
「学校か?」
「あぁ。アイツと兄弟だった、って広まった。」
真尋には何故かいろんなことが筒抜けだ。
「そうか。大変だなぁ。」
「面倒だ」
「やなことまで思い出しちまったか。」
「あぁ」
あぁ、気が重い。
「仲良くなったっつークラスのダチは?」
「アイツら、変わんねぇんだよ。」
真尋のことは言ってないが、涼と双子の兄弟だったこと、中1の冬に家出したこと、涼の家とは縁を切り他人になったことだけを簡単に伝えた。
アイツらはそれを聞いた後「そうだったんだぁ(ね)」と。ただそれだけで、後は何も。ただの結城鈴のダチでいてくれる。
「そうか。いいダチに出会えて良かったな。」
うん、と頷く。
「大丈夫だ」
まぶたが重い。頭を撫でる手が気持ちいい。
あぁ、また真尋の膝で眠ってしまう。だから膝枕は嫌だったんだ。
高校に通い出してから、なかなか夜に眠れなかった。だからいつも以上に簡単に睡魔に負けてしまうことが、なんとなくわかってたんだ。
膝枕で眠って、そのままいつの間にかベッドに運ばれてるなんて、カッコ悪ぃじゃねぇか。くそ。
「ここはお前の家なんだ。」
この家は夜でも電気が消えることはない。俺が真っ暗が苦手だから。ここが真尋と俺の家だから。
真尋が俺の家族だから。
「大丈夫だ」
真尋が近くにいると落ち着くのは、家族だから。
あぁ。眠ってしまう。
「おやすみ、鈴」
おやすみ、真尋
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