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第14話
ーーー真尋side
「おやすみ、鈴」
自分の膝で眠る鈴の頭を優しく撫でていた手で、鈴の顔にかかっていた綺麗な黒髪を耳にかける。
そして現れた目尻のホクロを優しく撫で、こめかみへ唇を落とす。
ーーーあぁ、愛しいな
今日帰って来てよかったと思う。
同じ学校に鈴の前の家族である谷ヶ野涼がいることは知っていた。不安ではあったがこれは鈴が乗り越えるべき壁で、自分も傍で支えるから大丈夫だろうと考えてそのまま葛城高校に通わせた。
しばらく距離を置くことにはなったが、2、3日置きには家に帰って、鈴が少しでも安らげる空間を作った。
鈴は弱く、脆い。
体ではなく中身が。
どの人間にも脆さというものはあるだろうが、鈴の場合は人一倍脆い。睡眠障害になるほどには。
谷ヶ野涼の件に加え俺の不在。最近は谷ヶ野の方は鈴なりに整理が出来てきてきたのか、少し落ち着いてきたと聞いていた(正司に頻繁に様子を見に行かせていた)。
しかし、いろいろと工夫をしていたとはいえ、同じ家で寝食を共にできないというのはかなりの痛手で、自覚していたかは定かではないが、鈴はかなり追い込まれていたようだ。
そこに来て今日の学校での件だ。
今日鈴の傍に居ることができて良かった。
「よく頑張ったな」
鈴が家出をするに至った直接の原因ではないものの、深く関わっていた谷ヶ野涼について、自分で考え、悩み、答えを出した。
世の中には考えるのを放棄し逃げるヤツは五万といる。
鈴は強い。だが弱く脆い。だけども強い。
さて、鈴は嫌がるが、そろそろ部屋に連れて行って寝かせるか。
寝てる間に運ばれるのが恥ずかしいって怒るんだ。可愛いもんだろ?
そっとベッドへ寝かせ額に唇を落とす。
きっと彼は翌朝目を覚まし、少し顔を赤らめ「またか」と大きなため息を吐きながら呟くのだろう。
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