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第6話
稔side
あまりの遅さに面倒くさくなって、振り返って文句を言おうとして…。ちょっと冷静になった
その子が頑張って歩いている様子を見たから…
「あの……」
「ふくかいちょーさん、あるくの、早いね…。僕、つかれちゃった…」
「……」
なんと返していいか分からなくてとりあえず、微笑んでみた。そうすれば大体の人は、黙ってくれるから…。本当につい癖でやってしまっただけだった。我ながら悲しいな
「あのね、無理に笑う…、しなくていいよ?」
「…ふっ、そうですか。それでは、遠慮なく。遅いので抱き上げますよ。私は忙しいので。
あ、それと、稔と呼んでください」
「稔さん…?」
「はい」
この子、中々面白いかもしれない。それよりも気になるのは、この喋り方。どう考えても…、平仮名が多い。それに何処と無く幼い気がする
高校生だと言われると、違和感が拭えない。
不思議な子だ。それがはじめの印象だった。
それにココの編入テストはかなり難しかったはず、この子が合格したとは思えない。そして、資料をチラッと見た感じではかなり高得点だったはず…。一体なんなんだ…?
「わっ…。たかい…、こわい……」
「怖かったらしっかり掴まっててください。あ、暴れると落とすので、大人しくしててくださいね。分かりましたか?」
「うん…わかったの……」
「君、名前は?まだ聞いてませんでしたよね。それと、テストは難しかったですか?」
「僕のなまえは、きりの ゆうひ…。"てすと" って、なぁに…?」
テストを知らない…だと……。まさか、この子のテスト結果は偽装なのか?何のために?
ここにいるよりも、外の学校に行った方が何倍も楽なはず…。ここに来るメリットが無いのに何か訳ありか?…そんなことを考えていると理事長室に着いていた。
「…ここだよ。…失礼します」
「おや、いらっしゃい。副会長の柳田稔くん。その子が編入生?はじめまして、君が夕陽くんだね。私はここの理事長、桜花 湊人。何かあったらここにおいで」
「はじめまして、ミナトさん。ぼくゆうひです えっと…、義父さんの弟さん…。良い人、言ってた!よろしく、おねがいします」
「そうか。奏人兄さんが…。それじゃ、この使い方も聞いてるかな?」
この子、理事長の甥っ子なのか…。しかし、名字が違う…もしかして、養子か?
それにしてもこの子、意外とタイプかもしれない…。少し幼い感じで、可愛いし。何より、人を見る目がかなりある。抱いてみたいな…
「うん。わかるの!」
「これね、特別でここにも入れるようになってるから無くさないでね」
「はーい!」
ココの学生証は、お金としても使えて、部屋のキーや、生徒会になれば生徒会室のキーにもなるのだ。つまりかなり便利だ。
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