6 / 88

第6話

稔side あまりの遅さに面倒くさくなって、振り返って文句を言おうとして…。ちょっと冷静になった その子が頑張って歩いている様子を見たから… 「あの……」 「ふくかいちょーさん、あるくの、早いね…。僕、つかれちゃった…」 「……」 なんと返していいか分からなくてとりあえず、微笑んでみた。そうすれば大体の人は、黙ってくれるから…。本当につい癖でやってしまっただけだった。我ながら悲しいな 「あのね、無理に笑う…、しなくていいよ?」 「…ふっ、そうですか。それでは、遠慮なく。遅いので抱き上げますよ。私は忙しいので。 あ、それと、稔と呼んでください」 「稔さん…?」 「はい」 この子、中々面白いかもしれない。それよりも気になるのは、この喋り方。どう考えても…、平仮名が多い。それに何処と無く幼い気がする 高校生だと言われると、違和感が拭えない。 不思議な子だ。それがはじめの印象だった。 それにココの編入テストはかなり難しかったはず、この子が合格したとは思えない。そして、資料をチラッと見た感じではかなり高得点だったはず…。一体なんなんだ…? 「わっ…。たかい…、こわい……」 「怖かったらしっかり掴まっててください。あ、暴れると落とすので、大人しくしててくださいね。分かりましたか?」 「うん…わかったの……」 「君、名前は?まだ聞いてませんでしたよね。それと、テストは難しかったですか?」 「僕のなまえは、きりの ゆうひ…。"てすと" って、なぁに…?」 テストを知らない…だと……。まさか、この子のテスト結果は偽装なのか?何のために? ここにいるよりも、外の学校に行った方が何倍も楽なはず…。ここに来るメリットが無いのに何か訳ありか?…そんなことを考えていると理事長室に着いていた。 「…ここだよ。…失礼します」 「おや、いらっしゃい。副会長の柳田稔くん。その子が編入生?はじめまして、君が夕陽くんだね。私はここの理事長、桜花 湊人。何かあったらここにおいで」 「はじめまして、ミナトさん。ぼくゆうひです えっと…、義父さんの弟さん…。良い人、言ってた!よろしく、おねがいします」 「そうか。奏人兄さんが…。それじゃ、この使い方も聞いてるかな?」 この子、理事長の甥っ子なのか…。しかし、名字が違う…もしかして、養子か? それにしてもこの子、意外とタイプかもしれない…。少し幼い感じで、可愛いし。何より、人を見る目がかなりある。抱いてみたいな… 「うん。わかるの!」 「これね、特別でここにも入れるようになってるから無くさないでね」 「はーい!」 ココの学生証は、お金としても使えて、部屋のキーや、生徒会になれば生徒会室のキーにもなるのだ。つまりかなり便利だ。

ともだちにシェアしよう!