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世話焼きチンさん
「賢二郎ぉ、学校まだ終わんねぇのかよぉ…お前のパンツん中、顕孝のとお前のとで汚れて蒸れて最悪なんだけど。早くシャワー浴びてスッキリしてぇよ」
(まだ4限目なんだから我慢しろよぉ)
「大体顕孝のやつは何涼しい顔して授業受けてやがんだ。アイツのせいで俺と賢二郎がこんな不快な思いをしてるっつーのに」
(チンさん、テレパシー飛ばすなよ!授業に集中できないじゃん!)
ケンジは自分の精子をごっくんしたことで本当にチンさんとテレパスで会話できるようになった。
そして朝のホームルームには間に合わず遅刻扱いになった上にチンさんを水洗することもできず、現在ケンジのパンツの中は非常に大変なことになっている。薄い陰毛は双方の精子でガビガビに乾き精子の臭いが充満している。今日は体育がなくて本当によかったとケンジは安堵していた。
しかしそんな最悪の環境下に置かれてる、もとい、汚れたケンジのパンツの中に閉じ込められているチンさんは我慢できずにテレパスを通じてケンジにグチグチグチグチと文句を垂れ流す。
――キーンコーン カーンコーン…
午前中の授業が全て終わり、教室中の生徒たちはやっと訪れた昼休みに思い思いリラックスをする。
ケンジも教科書を机の中にしまうと、横に掛けている鞄から財布を取り出した。
「ケンジー!学食いこうぜー!」
中学校時代からの友人である森山 がケンジに駆け寄っていつものようにケンジの首を後ろからしめる。
「ヴウッ!おいぃ…森山ぁ…やめろっての!」
「きひひひ、どーせケンジはきつねうどんだろぉ?」
「うるせぇ!」
それを引き金にケンジの周りには数人のクラスメートが集まり、みんなで学食に行くこととなった。が、その中にアキはいない。だからいつも決まってケンジが声をかける。
「アキー、学食行こー」
「早くしねぇと席埋まっちまうぞーアキー」
「…ん」
森山に肩を組まれたままケンジはアキの方の向き、森山と一緒にアキにそう言う。アキは渋々と言ったように重い腰を上げてゆらりとケンジたちの方へ歩く。
いつもクールすぎるアキに入学当初は怯えていたクラスメートもケンジと森山のおかげで徐々に慣れてきたようだった。だが当のアキは自分からこうしたコミュニティの輪に入ろうとはしない。中学生の時はそんなことなかったはずなのに、とケンジも少々困惑していた。
(アキ…もう入学して2ヶ月以上経つのに…なんで他の奴にはこんなに冷たいんだ?)
そんなケンジの疑問の回答をチンさんはテレパスを通じてアキの本音を受け取っていた。
(森山コロス森山コロス森山コロス森山コロス森山コロス森山コロス森山コロス)
「嫉妬が殺意になってるぞ…顕孝、落ち着け。いつものことだろ」
「チッ!」
チンさんの言葉に思わず舌打ちを打ってしまったアキにケンジたちは震え上がった。底抜けに明るい森山はケンジと一緒にすぐに明るく声をあげた。
「よ、よし!早く席取っちゃおうぜぇ!な、ケンジ!」
「お、おう!急げー!」
そんなケンジと森山に引っ張られて他の男子たちもそれに続いた。ケンジはその場を恐怖から救ったと思ったのに、この行動はますますアキの機嫌を悪くさせた。
(ケンジに触れるな俺のケンジだぞマジで中学から仲良しとかで調子乗ってんじゃねーよ森山マジで抹殺してぇケンジのあの儚くて細い肩を触って組んで剥いていいのは俺だけなんだよ森山マジでぶっコロだわ)
「顕孝、お前もう少し寛容になった方がいいぞ。賢二郎は他の奴とも普通に仲良しなんだから」
「チンさんマジ黙ってて」
チンさんは少ししょげてしまって頭を下げた。ケンジは股間がモゾモゾと動いたことに気が付かなかった。
学食は食券機で食券を買う制度で、ケンジたちは食券機に並んであれこれとメニューに悩んでいた。
「アキ、何食べる?」
ケンジは後ろにいるアキに恐る恐る尋ねた。さすがにアキもいつも通りのポーカーフェイスになっていた。そしていつも通りに答えた。
「俺はケンジと同じもの」
「え…俺今日きつねうどんにしようとしてたんだけど」
「うん、俺も同じ」
ニコッとケンジに笑いかけるアキの顔が妙に色っぽくてたまたま見てしまった周りの生徒も何人か顔を赤らめた。勿論ケンジも例に漏れず赤面する。
「ダメだダメだ賢二郎!もっと蛋白 質をとって筋肉をつけろ!」
「え?」
「大体今日は朝っぱらから顕孝に何回射精させられた?もうタマもかr 「わああああああああああ!」
早朝の、しかも(ほぼ倉庫とはいえ)学校でやってしまった愚行を思い出してしまったケンジは反射的に大きな声を出してしまった。周りの人の視線が一斉にケンジに向けられるとケンジは「しまった」というように自分で口を塞いだ。
(チンさん!本当にやめて!なんなんだよ!俺少食なの知ってるでしょ⁉︎)
テレパシーでの会話なのでケンジはちょっとだけ視線を下に向けてチンさんを見ながら頭の中でチンさんに反論する。
「お前はもう少し太れ!いっつまでもモヤシの人生でいいと思ってんのか?俺はお前がそんな奴なのは嫌だね!」
(チンさん関係ないじゃん!じゃあ何食べればいいのさ!)
「今日の日替わりがソースカツ丼とほうれん草の味噌汁セットだろ。あれだ」
(丼ものはダメだって!男子生徒はもれなく大盛りにされちゃうんだから!)
「大盛り結構、若人 はどんどん食え」
(俺と一心同体ならわかるでしょ?俺の胃袋の限界!)
「玉袋の限界ならわかるが胃袋は知ったこっちゃねぇ!ほら、もう次お前の番だぞ!」
前の人が退くと食券機が現れた。ケンジは500円玉を入れる。
「ほら!日替わりのボタンを押せ!」
(やだ!きつねうどんにするから!)
「あーあ、じゃあアキにテレパシーで送っちまおうかな、お前が中1の時にアキの裸を想像して夢精し「わかりましたあああああああああ!」
チンさんの企みに引っかかりケンジは日替わりセット(¥500)の食券を購入した。
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