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玉袋はパンパンにならない

 ソースカツ丼大盛りをチンさんに(そそのか)されて苦しみながらも平らげたケンジは午後の授業中はずっと胃もたれを起こしていた。 「あ゛ぁぁぁぁぁ………もうだめ、死ぬ、胃袋死んだ」 「あんなに食うからだよモヤシのくせに」  帰りのホームルームが終わって教室から生徒が散り散りしていく中、ケンジはまだ机に伏していた。その隣には森山が立っていて、揶揄(からか)うようにケンジの頭をくしゃくしゃにする。 「早く帰って寝たい…」 (でもその前に風呂に入りたい) 「寝る前に風呂に入ってくれ賢二郎…もうイカ臭くてたまんねぇよ」  ケンジとチンさんの不快感はMAXに達していた。そして森山の遠慮ないケンジへのスキンシップによってアキの殺意もMAXだった。チンさんはテレパシーでそれを感じ取ってビクッと背筋(?)を伸ばして震えた。  チンさんがアキにテレパシーで諌める間も無く、アキはくたびれたケンジの腕を強く掴んだ。そして鋭い視線は森山に向けられた。 「アキ?なんだよ、怖ぇ顔して…」 「別に…ケンジ、帰ろう」 「へ?あ、うん…でもちょっと待っ」 「帰ろう」 「ア、キ?」  ケンジに有無を言わさず、アキはケンジを教室から連れ出した。モヤシのケンジが抵抗したところでアキには全く敵うことはない。 「顕孝!おい、どうしたんだよ!」 「チンさんは黙ってて」 「え⁉︎ チンさん喋ってるの⁉︎」  まだ人目が多少あるのにチンさんのことを言葉に発してしまったが今の2人はそれどころではなかった。 「アキ!痛いってばぁ!離して!」  ケンジはかなりタイミングが悪かった。  その精一杯の抵抗を発した時、うっそうとしている公園の目の前にいたからだ。アキは急に進行方向を公園に変更すると、誰もこないような木々の中にケンジを連れ込み押し倒した。 「や…アキ!」  ジタバタして抵抗してもケンジはスラックスと汚れたトランクスを下ろされ、そこからは困惑しているチンさんが登場した。チンさんはすぐに起き上がり、アキの方に伸びた。 「おい顕孝!お前どうしたんだよ!いっつもだけど今日は特段にひどいぞ!」 「チンさん邪魔」 「俺を邪魔者扱いすんのかー!このクソガキ!」 「チンさんなんか所詮ケンジのチンコじゃん。それに…」  アキはチンさんを睨みながらチンさんの後ろに隠れているケンジの陰嚢を優しく揉んだ。 「チンさんも仕事してよ、ケンジのこれ全然いっぱいになってないじゃん」 「や、やだ…なんでそんなのぉ…」 「朝もあんだけ出させた張本人が言うか⁉︎こっちは精子の生産が追いつかねーんだよ!」 「待って!これチンさんが作ってるの⁉︎」  まるで工場長のようなチンさんの言い分にケンジは快感を忘れて驚いた。   「前々から言おうと思ってたんだ!お前は毎日毎日賢二郎に無理させすぎなんだよ!」 「………………は?」  ケンジの疑問やツッコミは無視されてチンさんとアキの口論のゴングが鳴ってしまった。 「賢二郎がモヤシなのは知ってんだろうが!玉袋はそんな短時間でパンパンにならねぇんだよ!」 「は?俺の金玉もうパンパンだけど、ついでにケンジに触れただけでチンコ勃ってんだけど」 「お前の生殖機能はバグってんだよ!」 「好きな子の可愛い姿みたら速攻勃つに決まってんだろうが!」 「じゃあその好きな子の気持ちを考えたことはあんのか!」  チンさんはドーンとアキに指摘した。ケンジは途端に顔が真っ青になる。 「は?ケンジが俺とのセックス嫌いってこと?」 「そうだと言ったらどうするんだ」 「チンさん!何言ってんだよ!」 「賢二郎はすっこんでろ!」 「え…ケンジは、俺とセックスするの、嫌なの?」  アキの目線は悲しそうにケンジに向けられた。ケンジはそれを見た途端に涙が溢れた。 「ち、違う!違うから!」 「……………本当なんだ…」 「だから違うって!」 「ケンジ、嘘つくときはいつも鼻がヒクヒク動くから、わかるよ」  そうアキに言われてケンジは慌てて鼻を隠す。するとケンジに覆いかぶさっていたアキは立ち上がった。 「………ごめん、ケンジ」 「へ…だからアキ!違う…」  ケンジの言い分も聞かずにアキはその場から素早く立ち去った。チンさんもアキが去っていく方向を眺めため息を吐いてうなだれた。 「賢二郎…お前、あのアキのハッタリに引っかかるの何回目だよ、ったく」 「あ…」  チンさんに指摘されてアキは全身から血の気が引いた。 「とりあえず俺をしまって、家に帰るぞ」 「う、うん」 「顕孝の家じゃねぇ、自分の家にだ」 「は?ダメだよ!アキに誤解されたままじゃ…」 「じゃあお前は今顕孝とヤりてぇのか?」  チンさんの真剣な声にケンジは反論することができなかった。

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