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第47話
連絡しないでと俺が言ったあの日以降、景はその約束を忠実に守り、一度も俺の番号にかけてくる事は無かった。
初めこそは寂しくもあったけど、毎日忙しくしているうちにそれも徐々に慣れていった。
……嘘。本当は寂しい。
実家から連絡が来て、年末年始は帰省するのかと訊かれたけど、今年はいいかなとなんとなく思ったし、バイトも忙しいから結局こっちで年越しをした。
あけましておめでとう、と景にメッセージを送ろうかずっと迷っていたけど、結局文字は入れずに挨拶のスタンプだけを送った。
猫が寝そべりながらエロ目になって腹立つ顔をしておめでとうといっているスタンプで、もしかしたらこの猫にツッこんでくれるかも、そしたら自然な流れでまた連絡するようになるかも、と思っていたけど、景からの返信はあっけないものだった。
[ おめでとう。]
猫にツッこむどころか、去年はありがとうとか、今年もよろしくねとかそんな文字も無いから落ち込んだ。
やっぱり、あんな風に言った俺の事が気に入らなくて、怒ってるのかもしれない。
連絡していいよ、と謝れば済む問題なんだろうけど、俺はつくづく意地っ張りで頑固者なんだなって事を今回の件で再確認した。
* * *
《……特に目指しているっていう俳優さんはいませんね。もちろん、現場には先輩方も同世代もたくさんいるので、楽しく勉強させてもらいながらやっていますし、尊敬している役者さんは数多くはいるのですが、僕が完全にその方になれるという訳では無いので。自分は自分として、コツコツとやっていきたいですね……》
世の中はこの間まで忘年会シーズンだったって言うのに、今じゃあっと言う間に新年会シーズンで、何がそんなに騒ぐことがあるのかというくらい、俺のバイト先は賑わっている。
ラストまで入っている俺はようやく休憩がもらえて、バックヤードで椅子に座りながら、いつものように景の動画をスマホで眺めていた。
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