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第104話
「昨日も言うたかもしれへんけど、すぐに俺んとこ来てくれなくてもええで。もし藤澤 景の事ホンマに諦めるんやったら、前向きに考えてみてくれへんかな?」
瞬くんは少し顔を傾けてニコリと笑った。
なんだか景に似ている仕草だったからドキッとした。
無意識に景と結びつけてしまった自分がいて、忘れたいと思っているのに、一体これからどのくらい彼の事を思い出してしまう瞬間があるのかと思うと少し怖くなった。
けれど、前を向かなければ。
「……うん!じゃあ、今度地元帰った時には返事する!それでもええかな?」
瞬くんの肘を掴んで顔を覗き込むと、瞬くんはニコリと笑った。
「ええで。じゃあ、そん時にまた聞くからな」
瞬くんはそう言うと、顔を近づけて俺の額にチュッ、とくちづけをした。
一瞬の出来事だったから逃げる暇も無く、気付いた時には瞬くんの顔が目の前にあって、細まった瞳に凝視されていたから、俺の顔は一気に沸騰して熱くなる。
瞬くんは「あっ」と零してからすぐに身体を離した。
「ごめん、こんな事してるとまたチャラいって思われるよな。修介が可愛かったからつい。もう何もせーへんから安心して?」
「あ、うん……」
瞬くんの唇があたった額に手を添えて口を横に結んだ。
昔何回もキスをした事はあるし、お互いの大事なところまで見た仲なのに、こんな事初めてされたかのように羞恥でいっぱいになった。
少し驚いたけど、もう何もせーへんと聞いて安心した。
やっぱり瞬くんは変わった。ちゃんと、俺だけを見てくれるんだ。
もし付き合ったら、俺の事、その言葉通りに大事にしてくれるんだろう。
人生で初めてちゃんと好きになって、初めて自分から告白して付き合ったのは瞬くんだった。
また、やり直せるのかな?俺たち。
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