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第106話 side翔平
今日ほどバイトを無断欠勤したいと思った日は無いかもしれない。
昨日、景に全てを話してしまった。
修介と瞬との関係。あと修介がゲイだって事。
辛うじて、修介の好きな奴は景だって事は隠しておけたけど。
景が悪いんだ。
あいつがオッパブの話をネタに脅してくるから。
そんな事さとみちゃんに知れたら嫌われてしまうかもしれない。
あいつの事だから、俺が吐かなかったら本当にさとみちゃん家に押しかけるつもりだったんだろう。
俺から聞き出したと思ったらすぐに電話を切りやがったし。
なんとなくだけど、自分が知らなかったっていう事実がムカついたんだろうなって思った。
あの感じだと、きっとあの後修介に問い詰めたに違いない。
あいつは嘘とか隠し事が一番嫌いだから。
今日は修介と入りも出も一緒のシフトだから、嫌でも顔を合わせてしまう。
気まずいな…と思いながら裏口から中に入って、PCの前で仕事をしている店長に挨拶して、バックヤードのドアを開けたら、早速、着替えをしている修介と目が合ってしまった。
とりあえず謝っとこうと思い、挨拶も適当に済ませた後に本題に入った。
「修介、昨日、景から何か言われた?悪ぃ、景に勝手に喋っちまって!あいつ俺の事脅して来たんだぜ?なんか喋らざるを得ないって感じでさ〜、マジ怖えよ……」
修介はポカンとした表情で俺の顔を見上げたかと思うと、途端に眉根を寄せて顔を険しくさせた。
「そうだったんや。翔平にも確認してたんや。脅して聞き出すなんて最低やな。何て言われたんよ?」
あれ、修介、景が俺から聞き出したって事知らなかったんだ。
機嫌わりぃな。
景とやっぱり何かあったんだな。
「言わないと、俺の秘密さとみちゃんにバラすからなって」
「秘密って?」
「……いや、それは、うん。別に言うほどの事じゃねーんだけどさ」
なんだか小っ恥ずかしくて隠してしまった。
修介はふぅん、と言いながらチャッチャと着替えを済ませていて、キャスケットを被ってロッカーの扉をパタンと閉めた。
「そっかぁ。翔平にも迷惑かけてごめんなぁ。でももうそんな迷惑かけへんから。俺、景と絶交したんよ」
「……絶交?」
俺はコートを脱ごうとした手をピタッと止める。その言葉を頭の中で繰り返してるうちに、アハハと声に出して笑ってしまった。
「絶交って、今時ある?!小学生かよ!」
「なっ……だってしょうがないやろ~、そう言ってしもうたんやから……。もうええんよ。俺、景の事諦めたから」
「え?諦めたって、お前振られちゃったの?」
「うん。告白してないし直接言われた訳や無いけど、俺に気持ちなんて全く無いって事がはっきり分かったから、もうええねん。俺、瞬くんとやり直そうかなぁ思うてて」
修介はロッカーの扉に視線を落としながらしんみりとしている。
待って待って。
こんな状況になってんの、もしかして俺のせいじゃね?
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