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第108話 side翔平
バイトを終えて修介と別れた帰り道、俺は早速、景に電話を掛けた。
家の方へ歩きながら耳にスマホを当てていたけど、一向に出ないから諦めてポケットに突っ込んだ。
家に着いて風呂に入った後、自分の部屋のベッドの上でゴロンと横になりながら、俺はさとみちゃんから届いたメッセージを見て悶えていた。
「え〜、さとみちゃん髪切ったのかよ、早く見てぇな……」
写真撮って見せて!と送ったけど、恥ずかしがり屋のさとみちゃんはもちろん撮ってくれなくて、代わりに『無理〜』という文字と、前足を合わせてごめんと謝っているウサギのスタンプを送ってきた。
それを見て俺は眉間に皺を寄せる。
クソヤベェな。さとみちゃん。超可愛い.…..!
「はーやーくーあーいーた……」
ニヤニヤして口に出しながら文字を打っている最中、急に画面が暗くなって着信音が鳴った。
「チッ」
あ、中途半端なところで中断されてしまったから思わず舌打ちをしてしまった。
悪い悪い、と思いながら体を起こしてベッドに腰掛け、電話に出た。
「は〜い。もしもーし」
『もしもし。ごめん翔平、電話くれたみたいだね。今大丈夫?』
景は超が付くほど律儀なんだよな。大丈夫?って聞いてくるの、昔から変わらない。
「あー大丈夫。もう仕事終わった?」
『ううん、まだ。今ご飯休憩中。どうしたの?』
「え、ワリィなそんな時に。早めに終わらすわ。あのさぁ、お前修介と喧嘩したの?」
そう言うと景は黙り込んだ。
あーあ。こいつ今、どうやって切り出そうか考え込んじゃってんな。
どう言えば自分の気持ちをうまく伝えられるか、一旦冷静になるっていう癖も昔っからだ。
俺ははじめ、その沈黙が怒ってるように見えて慣れなかったけど、今となってはもう慣れっこで、景の次の言葉を気長に待つ事にしている。
あー、俺もそろそろ髪切ろうかな。
そう思いながら前髪を弄っていた。
『今日、修介と会った?』
分かりやすいな、あからさまに落ち込んだ声出して。
きっと俺を脅した後すぐあいつに電話したんだろう。そこでつい言い過ぎたとか思ってるんだろうな。
「おー、バイト一緒だったぜ。お前修介に何言ったの?あいつ、景と絶交したっつってたぜ。いくら性の事とか瞬と付き合ってた事隠してたとはいえさぁ、そんなになるまであいつの事責めちゃったわけー?」
『……他には、何か言ってた?』
「他? えっとー、お前の事はもう……」
諦めるって言ってたって言おうとしたけど、修介は告白はしてないって言ってたから、これは言っちゃダメなやつか。危ない。
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