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第115話
三時間の飲み放題コースが終わると、強制的に店から追い出されるかたちになって、店の前で解散となった。
俺と瞬くん以外は全員カラオケに行くようで、俺たちはまたみんなに揶揄されながらも笑顔で手を振った。
また会おう、と約束してから帰ろうとした時、祐也に呼び止められたから、瞬くんに一言断ってから建物の隅に行った。
「修介、ホンマにええの?重村と付き合うて」
いきなり真剣な顔でそんな事を言われるからキョトンとしてしまう。
急に呼び出したと思ったらその話?
そんな言い方、まるで瞬くんと付き合っちゃいけないみたいに聞こえるけど。
「えぇー?なんで?祐也は俺らが付き合うの反対なんか?」
ヘラヘラと笑うと、祐也はちょっと呆れて困ったように微笑んだ。
「いや、反対とかや無いし、もちろん修介がそれでええんやったらええんやけど。ホンマに後悔はしてないんか?なんか、振られても無いのに藤澤 景の事諦めるなんて」
「ぜーんぜん!後悔なんてしてへんよ。景にはもう振られたも同然やから。これからまた瞬くんと楽しく付き合って行こうってホンマに思うとるよ?」
笑って明るく言うと、祐也はそれ以上は口出しせずに、分かった、と納得してくれた。
でも俺はこの時、自分でも気付いていなかった。
本当の気持ちを無理に押し込めていたという事を。
「じゃあ、また飲もうぜ。今度そっちの方行く機会あったら俺も修介ん家泊めてくれる?」
「うん、ええよ。祐也、色々と話聞いてくれてありがとね。またー」
祐也は手を振り、すぐ横のビルの中にあるカラオケ屋に入って行った。
手を振って見送っていると、背後から声がした。
「あー、なんか俺、くやし〜」
振り返ると、そこには不貞腐れた表情の瞬くんがいて、景の事を話していたのがバレていたのかと思い、オロオロと挙動不審になってしまった。
それを見た瞬くんはすぐに表情を崩してクスッと笑って、俺の手を取ってグッと握った。
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