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第116話

高校の頃はこっそり手を繋ぐ事はあったけど、まさかこんなに堂々と握ってくるなんて、と少し羞恥の気持ちになりながらもその手を振り払う事は出来なかった。幸いこんな田舎だし、人には見られていないようだけど。 「やっぱり俺、ちゃんと修介の事好きやで。だって飲み会中、ずっと祐也に嫉妬しとったもん」 言われた途端、身体中が熱くなった。 まさか、瞬くんからそんな事を言われるなんて。 瞬くんが遊び人だった頃は、俺がいくら他の友達と仲良く話したりしてても嫉妬のしの字も出なかったのに。 なんか、俺…… 「瞬くんが嫉妬してくれるなんて、めっちゃ嬉しい……」 酔いもあるから顔が熱くて、額に片方の掌を当てながらそう呟くと、瞬くんはますます手をギュッと握った。 そして、予想外の事を口にした。 「今から俺ん家来ーへん?オカン以外誰もおらへんし、オカンもとっくに部屋で寝とるから。俺んちで、朝までゲームせーへん?」 え。 えーーーーっ!! そ、それって。初めて俺を家に誘ってくれた時のセリフ。 もしかして……?! 「嫌なら無理にとは言わんけど」 「いやっ、別に、嫌とかじゃ無いけど……っ!」 誤解されないように手をブンブン振って焦って言った。 嫌ではないけど、行ってもいいものなのかと逡巡する間も無く、瞬くんは笑った。 「じゃあ、ええな?」 「あ……うんっ」 頷くと、瞬くんは嬉しそうに俺の手を引っ張って歩き始めた。 それってもしかして、あんな事やこんな事、だよね?!いくら馬鹿な俺でも、それくらいは分かるよ! そう思いながらも口には出さず、引っ張られながら瞬くんの後ろ姿をジッと眺めていた。 展開が早すぎて、脳みそがついていけない。 酔いもあるからますます働かないし。 でも、付き合うって、そういう事だよね? 自分に言い聞かせながら、不安と期待を背負って瞬くんの斜め後ろを歩いた。 途中で見知らぬサラリーマンとすれ違った。 その人は俺たちが手を繋いでいるのを物珍しそうに見ていたけど、瞬くんはまるで動揺もせずに俺の手を離そうとはしなかった。

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