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第119話
着替え終えてから、再度部屋の真ん中に膝を抱えるように座って、ベッドの側面に背中をつけた。
スマホとペットボトルは、サーフボードのような形をしているガラステーブルの上に置いた。
座るとズボンの裾を踏んづけてしまいそうだったから、両手で布をたくし上げて、袖もまくって手首を出す。
横目で瞬くんを盗み見ると、下はボクサーパンツ一枚になっていて、形のいいお尻がむき出しになっていたからドキドキしてしまった。
瞬くんはただ細いだけじゃなくて、全体的にちゃんと筋肉もついている。
あの頃よりも、腿やふくらはぎがガッチリしている気がした。
もしかしたら瞬くんも景みたいにコッソリ体を鍛えているのかもしれない。
……今、景みたいに、って無意識に考えてしまった。
(もう!こんな時まで!早よ頭の中から出て行けや!)
目をギュッと瞑って頭を横にブンブンと振っていると、目撃された瞬くんにふふっと笑われた。
着替え終えた瞬くんは、パタンとクローゼットの扉を閉めると、俺の右隣に腰を下ろして並んだ。脚を開いて肘を膝の上に置いて手をダランとさせたと思ったら、タバコの箱を傾けて「吸ってもええ?」と言って器用に一本取り出したから、俺はうん、と頷いた。
「どうしたん修介?首振って。そんなに酔い回っとるんか?」
「あ、いや、そこまで酔うてへんから大丈夫やけど……」
「ホンマ〜?顔赤いで?もしかして緊張しとるん?」
「えっ!!」
不敵な笑みを浮かべる瞬くんの顔が近いなと思いながらも、その顔を凝視してしまう。
瞬くんは紫煙をくゆらせながら、視線を外して宙を見ている。
そんな言い方するって事は、やっぱりそういう事するって意味だよね?
「はは、そんな驚かんでも……なんや修介、親の服借りてきた子供みたいやな。めっちゃ可愛ええで」
瞬くんは俺の肘のあたりでシワが寄ってたるまった布生地を少しだけ引っ張りながら言った。
いつもの俺だったら、可愛いとか子供とか言われた事に対してツッコミを入れるところだけど、今はそんなの考えられる余裕は無い。
心臓が、破裂する。
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