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第118話
確かあの時の俺は、心構えがしっかり出来ていて、やる気満々だった。
並んで座ってゲームをしていたら、急に腕を掴まれてキスをされて、そのままベッドに横たわったんだ。
電気を消された瞬間、ドキドキと言いすぎて心臓が口から出るかと思った。
痛かったのは予想外だったけど。
(今日も、痛かったらどうしよう……)
そう考えたところで即座に頭をブンブンと振った。
問題はそこ?
俺、本当に瞬くんとするの?本当にいいの?
……いや、いいに決まってる。
だって、俺たちは付き合っているんだから。
ちょっといきなり過ぎて展開が早い気がするけど、いつかはこうなるんだし、別に問題無い。
よし、と唇を噛み、グッと拳を作って決心したところで、ドアが開いた。
「おまたせー。はいよ」
瞬くんがミネラルウォーターのペットボトルをこちらに差し出してくれた。
「あ、ありがと」
その綺麗な顔を直視出来なくて、少し俯きながらそれを受け取った。
顔が熱いのは酒のせいだ。そう自分に言い聞かせながら。
水を一口飲んでキャップを閉めると、瞬くんはクローゼットを開けて中を覗き込みながらゴソゴソと棚を開けて、グレーのスウェットをこちらに手渡してきた。
「良かったらこれに着替えれば?修介には大き過ぎてブカブカかもしれんけどな」
「あ、ありがと。ブカブカは余計やけどな……」
フッ、と瞬くんが目を細めると、俺に背中を向けたと思ったら、いきなり着ていたニットセーターの裾を両手で持って脱ぎはじめたから驚いてしまった。
(えっ!も、もう?!)
体にピタッとフィットした白い半袖Tシャツ一枚になると、瞬くんの背中の筋肉が布越しに浮き上がっていたから慌てて目を背ける。
その後白いパーカーを着だしたから、部屋着に着替えただけか、とホッと一息ついて、俺も瞬くんに背を向けて渡されたスウェットに着替えた。
瞬くんが言うようにそれは俺にとっては大きめだった。でもそのオーバーサイズのトレーナーのお陰で、うまく下着が隠れて見られずに済んだから良かった。
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