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第121話

目を閉じた途端、ガラステーブルの上にあった俺のスマホが震えて、ガガガガ...と耳に痛く突き刺すような音が響いた。 驚いた俺はつい目を開けてしまった。 瞬くんも動きを止めて、俺の首の後ろに置いていた手を離して体を起こし、視線をスマホの画面に移した。 二人で、その画面に表示された文字を凝視して、動けなくなった。 [着信 藤澤 景] 見た瞬間、まるで景がこの今の状況をどこかでこっそり見ているんじゃないかと思ってしまい、カッと体が熱くなった。 あんなに酷い事を言ったっていうのに、俺は何度も電話を無視していて出る筈も無いのに、何故景はこうやって俺に電話をしてくるのか。 今ここで電話に出て、瞬くんといるから、もう邪魔をしないでと言ったらどうなるんだろう。 見つめながら脳裏で考えた。 瞬くんも誰からの電話なのかはハッキリと分かっているはずなのに、何も言わなかった。 部屋に虚しく響くそのスマホをしばらく眺めていたら、ピタッと動きが止まった。 鳴り止んでから、どう言えばいいか分からなくて黙っていたら、瞬くんの方が口を開いた。 「藤澤 景とは、よく連絡取り合ってるん?」 少し気を落としたような声を発したから、俺は慌てて首を横に振った。 「ううん!俺、景にはもう会わないって決めたんよ!瞬くんが俺のアパートに来てくれた日、色々あって喧嘩したから多分その事で掛けてきてるんやと思うけど、あの日以来一回も出てへん!このまま、自然と疎遠になってくと思うでっ?」 早口でそう言うと、瞬くんは安堵の表情を浮かべて俺の頭を撫でた。 「後悔、しない?」 後悔って、何が? 景と会わないって決めた事?それとも、瞬くんとこれからするであろう事? 瞬くんを見つめながら考えたけど、どっちもな気がした。 掌の暖かい体温を感じながら、また頷いて、顔だけを瞬くんの方へ向けて、今度は俺が先に瞳を閉じてその唇を待った。 心臓がドキドキと早鐘を打ちながらもしばらくそうしていると、また後頭部が手で包み込まれて、唇が柔らかいもので押しつけられた。 それはもちろん、瞬くんの唇で。 下唇を少し吸われるだけの優しいキスで、瞬くんの顔はすぐに離れていった。 ふぅと息を吐いてから、息を止めていたんだと気付く。 目を開けると、瞬くんはわずかに微笑んでいた。 「久しぶりやな。こうすんの」 「……うん」 俺は唇を尖らせながら頷いた。緊張のあまり、表情筋が硬くなってしまう。 離れたと思ったら、再度顔が近づいてきたから瞳を閉じた。 今度のキスは、優しくなかった。 口内に侵入してきたそれに、俺は応えるように反応する。 しばらくしてから、初めてこの部屋でした時と同じように、ベッドに横たわった後に電気が消された。

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