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第126話

泣きじゃくる俺を見て、瞬くんは何も言わなかったけれど、微笑して俺の頭を撫でたり、腕をさすったりしてくれた。 俺の涙が止まると、瞬くんはベッドから降りて電気をつけて、ちょっと待ってろ、と言って寝転がったままの俺を置いて部屋を出て行ってしまった。 あぁ、俺何やってるんだろう。 腫れぼったくなった目で天井を見上げながら、今更後悔で胸がいっぱいになった。 瞬くんはちゃんと、後悔しない?って訊いてくれたのに。 俺は蓋をしていたんだ。自分の本当の気持ち、分かっていた筈なのに。 きっと、瞬くんを傷付けた。 もう一度瞼を手で擦ってから、いつまでも一人で寝ていられないと、体を起き上がらせてベッドから降りて、さっきみたいにベットの淵に背中をつけて膝を抱えて座った。 トントン…と二階へ上がってくる足音が聞こえたから、さらに背中を丸めて小さくなった。 瞬くんが部屋に入って来た気配があったけど、わざとそちらを見なかった。 まず何から謝ろうか…と頭を悩ませていると、目の前に赤いマグカップが差し出された。 「ホットジンジャー。蜂蜜も入っとるから飲みやすいと思うけど、苦手?」 瞬くんは顔を傾けて優しい声を発したから、また泣きそうになったけれどグッと堪えてかぶりを振った。 「ううんっ、大丈夫……」 「良かった。これ飲んでちょっと落ち着きぃや?身体暖まるで。まだちょっと熱いかもしれんけど」 「あ、ありがとう……」 マグカップを受け取って中を覗くと、俺の顔を湯気が包んで、途端に生姜のツンとした香りがした。 泣いて重く腫れぼったくなった目の周りもじんわりと暖かくなってくるから安心した。 猫舌な俺にはすぐには飲めなさそうだから、そのまま揺れる液体を見つめていた。 瞬くんも背中をベットの側面につけて、俺の隣に腰掛ける。 お互い無言だったけど、どう考えても俺が悪いんだから、ちゃんと謝ろうと思い、恐る恐る口を開いた。

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