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第136話
千葉に帰ってきた次の日の夕方。
バイト先に早めに出向き、俺の代わりにシフトに出てくれた人達や店長にお礼の挨拶をした後、お土産を渡した。
もちろん、翔平にも。
翔平は白い箱に入った包みを一つ取った。
「何これ〜?すげぇ美味そう!」
「柚子もなか。バイト終わりにでも食べてみて?」
「いや、今食う。腹減ってるし」
まだ着替えてもいないのにギリギリにならないものかと少し心配になるけど、翔平は思いの外直ぐに食べ終わっていた。
「で、瞬とは上手くいったの?」
ギョッとして、俺は動きを止めてしまう。
ペットボトルのコーラを飲みながら翔平は俺に問うけど、出来るなら話したくない。
何も返答が無いことに翔平は不思議がって無邪気に笑った。
「あ、何?もう瞬が恋しくて寂しくなっちゃった?そりゃあ遠距離だもんな。ちゃんとあっちで思い出残して来たんだろうな?」
「……あの、翔平、笑わんと聞いてくれる?」
「うん、何ー?場合によっては笑うけど」
「(笑われんの確定やな)……あの、付き合ったんやけど……別れた……」
「……は?」
俺は翔平にはなぜかすべて打ち明けてしまう癖がある。きっと何を言っても驚かれないって分かってるし、気楽なんだ。
案の定だけど、翔平は爆笑した。
「ハハハ!馬鹿じゃねーの?瞬が可哀想だわー!いざやろうと思ったら出来ませんでしたって、瞬のハートはズタボロだな!」
「それは分かってるけど!俺が悪いねん……結局、景の事忘れられなくて……」
「無理して諦めようとするからそんな事になってんだろ。だから告れって前から言ってんじゃん。諦めきれてないのに、他の奴と上手くいく訳ねーんだから!今日電話して早く告白しろよ、景に」
「ええっ、今日?無理やで!心の準備がっ!」
「じゃあ今月中。じゃないといつまでもそんなウジウジ悩む結果になるんだぜ?告白は無理でも、仲直りくらいはしろよ。いつまでも子供みたいに意地張ってねぇでさ!」
確かに、いつまでもこんな状況でいい訳が無い。
景は何度も俺に電話して来てくれているんだ。
もう、面倒くさい奴だと思われているかもしれない。
でもやっぱり景との関係がこのまま終わりになるのは嫌だ。
「じゃあ、仲直りは、する」
「言ったな?期待してっから!頑張れよ!」
翔平はバシッと俺の腕を叩いて気合を入れた。
そうだ。せめて謝ろう。
こうなったのも自分のわがままで頑固な性格が然らしめたものだ。
俺はどの道、景から逃れる事は出来ない。
前に進むためには、この問題を解決しなくては。
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