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第156話
湯葉を箸で掬って食べながら、景はこれから出演する映画やドラマの事を話してくれた。
今度出演する映画は大御所が揃いに揃っていて、有名な役者さんの名前がどんどん出てくるから、俺はワクワクしながらその話を聞いていた。
凄いなぁ景って。
俺とは住む世界が違い過ぎる。
景がふと、なくなったお酒を注いでくれたから、ありがと、と礼を言って一口飲んだ。
なんとなくまた無言になったから、俺は斜め向かいから景の顔をチラッと盗み見る。
最初はあんなに緊張していたけど、今は随分と慣れてようやく普段通りに過ごすことが出来ている。
長い時間こうやって一緒にいるけど、俺に触れてきたのはさっきの一回だけで、あの後景はもう俺に触れなかった。
なんだか疑問に思えてきた。
俺たちって、本当に恋人同士でいいんだよね?
景は俺とあんな熱烈なキスをしたのをまるで覚えていないかのように、友達のような態度で俺に接してくる。
いや、お店だし、イチャイチャくっつかれても困るんだけど。
なんだかモヤモヤしてしまった。
ここでハッと気付いた。
そういえば景には、受け入れてとか、俺とだったら乗り越えられるとか言われたけど、はっきりと恋人になってなんて事は言われていない。
好きだって言われたのは事実だけど、変人の景の事だから、もしかしたらそんな気は無いんじゃ……?
そばにいてよって言葉は、これからもこうやってたまに会ってって意味なだけで、景は付き合う気なんて全く無かったらどうしよう。
俺は勝手に話を進める癖があるから、今回もまた自惚れていたら恥ずかしい。
景に迷惑はかけないようにするって言った自分の言葉を思い出して、持っていたグラスをテーブルの上に置いて、背筋を伸ばした。
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