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第160話

景との甘いキスを交わした日から三週間が経とうとしていた。 バイト終わりに、翔平と前から気になっていた駅前の焼き鳥屋に来ていた。 モクモクと煙が漂う中、俺たちはカウンター席に並んで座ってビールで乾杯をする。 仕事終わりのサラリーマンなどが沢山いて、店内は混雑して満席だった。 「はぁ」 溜息をつく。 この店内の賑やかさとは裏腹に、俺の胸は寂しさいっぱいに沈んでいた。 景はまた仕事が立て込んで忙しくなってしまったようで、あの日以来会えていない。 電話は何度かしてくれたけれど、それだけでは物足りない。 こうなるって事は分かっていた筈なのに。 付き合う前は三週間なんてあっという間だったのに、いざ気持ちが通い合ったらやっぱり欲張りになるみたいで、声だけじゃとてもじゃないけど寂しさを紛らわせる事が出来ない。 それに加えて、景があんな風にキスをしてくれたり、大事にするって言ってくれたりしてくれた事が凄く嬉しくて、余計に会いたさが募る。 今でもあの時の事を思い出すと、じんわりと胸が熱くなる。 寂しさのピークになっていた頃、気晴らしになればと翔平が飲みに誘ってくれたのだった。 「はい、四回目〜」 翔平は俺の溜息を数え、ニコニコしながら砂肝を頬張っている。 「ほら、そんなシケた面してねーで早く食えよ!酒と焼き鳥が不味くなんだろ?あいつしばらく海外なんだし、しょーがねーじゃん。会いに行ける距離じゃねーんだから!」 「うーん、それは分かっとるんやけどなぁ……やっぱり寂しくて……」 俺はグイッとビールを一口飲んでグラスを置くと、また無意識に溜息をついていた。 「あ、そーいや聞いた?バイト先に今度新しい女の子が入ってくるらしいぜ?大学一年生だから、最近までJKだったんだってよ。噂によると可愛いらしくて。ま、俺には関係ねーけどね。さとみちゃんに勝てる女子はいねーし!」 「ふーん」 翔平は盛り上げようとしてくれたけど、俺は全く持って興味が無く、もう一度溜息を吐いた。 翔平はもう溜息の数を数える事は無く、俺に問いかけた。

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