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第161話

「そういやお前らってさ、もうしたの?キス」 「えっ!?……あ」 翔平は知らなかったのを今思い出した。付き合う前にすでに景にキスをされていたという事を。 蘇る、景の甘いタバコの香り、吐息、指先の熱。 「そりゃしてるよな、いい大人だし」 「……」 俺は無言で鶏皮を頬張った。 カリカリに焼いてあるそれにレモンを搾って食べるとさっぱりとして美味しい。 なんだか恥ずかしくて何も言わないでいると。 「んじゃセックスは?」 「ゴホッ!」 レモン汁が喉の奥に染みた。 翔平はあんなに明るかった髪を就活のため黒に染めて、黙っていれば凄く知的に見えるのに、中身と発言はやっぱり変わらない。 晴人といい秀明といい翔平といい、どうしてすぐそういう事ばかり訊いてくるのだ。 翔平の隣にいるサラリーマンが、気のせいかもしれないけれどニヤリと笑った気がした。 「ちょっと、何言うて」 「したの?」 小声で話しかけたのにもかかわらず、翔平は相変わらず空気を読まずに声のボリュームを落とさずにニヤニヤして訊いてくる。 「……まだ」 「へぇ。ま、付き合って間も無いしな。んじゃ近々弾けちゃうかもね〜」 「……」 「あいつ、すげぇエロそう……」 「……だよね」 翔平はボンヤリと宙を見ながら目を細めたから、俺も宙を見ながら景の事を考えた。 それは俺も思っていた。景、想像だと凄くエロくて凄く上手そう。 あんなに腰が砕けそうになるくらいの甘いキスが出来るんだから、エッチなんかしたらどうなっちゃうんだろう。 ここで、前から密かに気になっていた事を翔平に訊いてみることにした。

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