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第162話
「あの、翔平、ちょっと訊きたいんやけど……景って、今まで男を好きになったりとか、男と付き合ったりした事ってあるん?」
「あん?ねーに決まってんじゃん。アイツは昔から女が好きだったし、女としか付き合ってねーよ」
「だ、だよね」
やっぱり、今回初めて同性を好きになったのか。
翔平は何かに気付いたように俺に問いかけた。
「そういやお前、瞬以外の奴とした事あんの?」
「えっ、な、無い……です」
「え、あいつとした時、すげー痛かったんだろ?耐えられんの?景の……その……ゴニョゴニョ」
「……」
そう。これも忘れてはいない。
俺はエッチの経験が皆無に等しい。
ついこの間も瞬くんに触られた時痛かったし、もしかしたら俺って不感症なんじゃないかと疑っている。
景とのキスは凄く気持ちがいいけど、それ以上は果たしてどうなるのか。
景といざエッチするってなった時に、痛い思いしたらどうしよう。
景の事、満足させてあげられなかったら、瞬くんみたいに俺とは付き合っていけないって言われてしまうかもしれない。
せっかく両想いになれたのに、体の相性が悪かったら……
「嫌われたくないから、痛くても我慢する…」
「ハハ。まぁ、たまたま瞬との相性が悪かっただけかもしんねーしな。大丈夫じゃん?もし景としてみて痛かったとしても、景はそーいうので嫌ったりするはずねーだろ。だから安心しろよ」
「えっ、ホンマ?」
「ていうかあいつ、モテまくってるけど根はすげー真面目だから、付き合った事って少ない筈だぜ。景が自分から告白なんてしたの、俺が知ってる限り聞いたことねーし。しかも男の修介に告白なんてしてんだから、そんなんで嫌うわけねーじゃん。すげー大事にしてくれると思うけど」
「へー……」
翔平のその話に胸が高鳴った。
景に選ばれた俺って、もしかして凄い人なの?
手を握られながら交際を申し込まれたなんて、とてもレアな体験だったのかな。
「で、次はいつ会える予定?」
「あぁ、来週。また景のマンションに行くんよ」
「へぇ。じゃあそん時に弾けちゃうな」
「えぇっ?だ、だって、ただ家でくつろぐだけやで?」
「だから、くつろぐって名目でそういう雰囲気に持ってくんだろうが。景だってそういうの狙って家に誘ったんじゃねーの?」
そうなの?
電話では、また家においで、っていつもの調子で言われたから、特に何も考えずに返事してしまったけれど。
「景も、そういう事考えてくれてるんやろうか?」
「男なんてエロい事しか考えてねーんだから。景だってあわよくばお前とそうなりてーって思ってるぜ、絶対」
「……うむむ……」
嬉しいような、恥ずかしいような。
景は変わり者だから、もしかしたらそんな気はさらさら無いのにかもしれないけど、俺はあわよくば、そうなってほしい。
最近、夜一人で眠る時、彼の裸を想像してしまうのだ。
景の、あの長い指で、俺の……
カッと身体が熱くなったけど、誤魔化すようにまたビールを一気飲みして再度注文した。
まぁ、まだ付き合って間もないんだし、エッチは無かったら無かったで大事にしてくれてるんだなって思うし、会えるだけで十分だ。
この時は、そう思っていた。
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