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第164話

『何か、用事あったかな?』 驚きと喜びのあまりに言葉を失っていると、景は少しへり下った声色で発したから、何度も首を横に振った。 「ないないっ!全然ないっ!めっちゃ暇やで!」 俺がそう言うと、景は電話の向こうでクスッと笑った。 『ごめんねいきなり言って。バイトで疲れてるのに。こっちに着いたら、連絡くれれば修介の事駅まで車で迎えに行こうと思ってるけど』 「えっ、ええよ!そんなん大変やろ?マンションにいてくれて大丈夫やで?そんな遠くないんやし。泊めてくれるだけで十分やで!」 『大丈夫?もし必要だったら言ってね。僕、ご飯作って待ってるから』 「えっ、作ってくれるん?」 『もちろん。修介の好きな抹茶のアイスも付けるよ。じゃあ、一応、駅着いたら連絡くれるかな』 やった!アイス! 好きだって言ったのを覚えててくれたんだ! 「うん!分かった!じゃあ、宜しくね?」 『うん。ありがと修介。じゃあまた』 電話を切って画面を見つめた。 まさか、翔平の話していた事がこんなにもはやく現実になるなんて。 「アイス……」 ハッとして、首を振った。 違う違う。喜ぶべきところは、某高級アイスじゃない。 景は、俺を誘ってくれてるんだ。 ど、どうしよう。今日、景の家に着いた途端、襲われてしまったら……。 いや、まだ分からない。 景は女の子の体しか知らない訳だし、そんなに早く男の体を抱く事を受け入れるのだろうか。 もしかして、やっぱり俺の思い違いなのかも。 ただ単に長く一緒にいたいだけで、そんな気はさらさら無いのかもしれない。 はぁー。あの超絶イケメン、何考えてるのかたまに分からないところがあるから、困ったものだ。

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