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第212話

「どうする?日替わりメニューもあるけど」 「シフォンケーキ&カフェオレで!」 「早いな。じゃあ、僕もそれにしよう」 景が慶子さんに頼んでくれると、なんだか手持ち無沙汰になって、ソワソワとしてしまった。 目の前に座るイケメンは掛けていた伊達眼鏡を外して、ニコリとする。 あ、なんか、デートっぽい。 実は景とこうやってカフェでのんびりしてみたいな、って思ってたんだ。 飲み屋で夜飲むのもいいけど、陽が高いうちからこういう風にするのもいいよね。 さっきのモヤモヤがだんだん薄れてきた気がした。 景はスマホを取り出して、実家から送られてきた犬のモコの写真を見せてくれた。 それを眺めていたら、慶子さんの明るく高い声が頭上から降ってくる。 「お待たせしました〜」 俺たちの目の前にお皿に乗ったふわふわのシフォンケーキとカップが置かれた。 ケーキの横には、ブルーベリーソースがかかった生クリームが添えてある。 いたたぎまーす、と言って早速口に運ぶと、そのしっとりとした舌触りに驚く。 卵の優しい味がして、思わず目が垂れた。 「修介って、美味しそうに食べるよね」 「だって、ホンマに美味しいんやもん」 「香りがいいよね。白ごま油を使ってるんだって。慶子さん、随分と研究したみたいだよ」 「へぇー」 景はよくここに来てるんだろうな……と思って食べていたら、景のスマホに着信が来た。 「あ、宮ちゃんだ」 「宮ちゃんって、マネージャーさん?」 「うん。ごめん、ちょっと電話して来るね」 そう言って景は外に出て行った。 残された俺は一人で黙々とケーキを頬張る。 味わっていると、慶子さんが奥から出てきて俺の向かいの席に腰を降ろした。

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