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第216話
「しゅーすけ〜」
景は苛立ったように余計に固い声を響かせる。
でもやっぱり俺の口からは何も言葉が出てこない。
視線を宙にさ迷わせていると、頬を片手で挟まれて思い切りギュムっとされた。
「いひゃい……」
「僕、君に告白した時に何て言ったか覚えてる? あえて言うなら、直して欲しいところ」
「……しゅなおじゃにゃいところ」
「正解。よく分かってるじゃん」
だから言いなさい、とでも言うように景は余計に力を入れて俺の顔を左右に振り回してから、手を離してくれた。
俺は景の上半身に寄りかかるようにしながら、またぐるぐると考える。
景は、俺とエッチしてくれたし、こんなに人を好きになった事なんて無いとまで言ってくれた。
‘‘大丈夫だよね?俺と一緒にいるって決めた事、後悔して無い?’’
こんな簡単な事なのに、なんで言えないんだろ。
景は痺れを切らし、また苛立ったように声を発した。
「修介、ちゃんと言って。僕エスパーじゃないんだから、言ってくれなくちゃ何考えてるのか分からないよ」
あ、景、エスパーじゃないの?
何もかも完璧で、景に出来ない事は無さそうだからそうなんじゃないかって思った事もあるけど。
あぁ、今はそんな事どうでもいい。
とにかく、これ以上景との時間を無駄にしたくない。
俺はバッと顔を持ち上げた。
「ごめんごめん。俺好き過ぎんねん、景の事。だからたまに不安になるって事!きっと景の何倍も、好きな気持ちはおっきいから……」
あぁ、だから。
何故俺はこんなに女々しいのだ。
景、きっと困ってる。
こんな話もうやめよう。
俺は景の胸を両手で押して、身体を起こして笑った。
「あーごめん。やっぱ何でもな……」
「修介」
景は俺の両手を取って、真剣な眼差しでこちらを見据えた。
胸がキュンとしたのも束の間、ぐるりと急に景色が変わり、気付いたら天井を見上げていた。
そしてすぐに、景の唇によって口を塞がれた。
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