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第218話
(ん?なんか、ほんまに熱くない?景)
おでこや頬に手を当てると、火傷しそうなくらい熱かった。
景は俺の首元に顔を埋めたまま、目を閉じて動かないでいる。
違和感は確信に変わった。
車の中で感じ取った景の体温、それに火照っていた顔。
もしかしてこれって、興奮してるんじゃなくて……
「景、具合悪いんやないの?」
「……悪くない」
「嘘やろ。めっちゃ熱いで。熱計ってみいや」
「……怖いから計りたくない」
「もうっ、アホちゃうか? なんで言わへんの?いつから?」
「映画館出たあたりから、ちょっと変な感じはしてたんだけど……宮ちゃんと電話してる時に頭がクラクラしてたから、ちょっとだけ休んで、それでマシになったと思ってたけど。興奮したら、なんだか悪化したみたい」
「えっ」
電話、随分長いなとは思ったけど、まさか休んでいたなんて。
戻って来た時笑顔だったし、その後も全然気が付かなかった。って事は演技してたって事か。
さすが演技派俳優。
いやいや、感心している場合じゃない!
「なんやねん。人には素直になれなんて偉そうに言うといて。なんでホンマの事言わへんの?」
「だって、二人の時間大事にしたいし……セックスもしたいし……」
なんだそりゃ!
俺は肩をぐっと押して景と目を合わせた。
「そんな体で、出来る訳ないやろ?看病してあげるから、今日は大人しく寝とき?」
俺は景を起き上がらせてソファーをベッドの形に直すと、景の肩を押して再度そこに無理やり寝転がらせた。
タオルケットをかけてやると、景は困った顔でこちらを見ながら、俺の手首を掴んで離さなかった。
「やだよこんなの。せっかく二人でいられるのに」
子供みたいに駄々をこねる景を見て、キュンと切なくなるような、可愛くて笑っちゃうような複雑な心境だ。
でもこんなに弱々しい景は滅多に見れないから、俺は少しだけ優越感を味わった。
「今日は俺の家で寝ててええで?明日の夜も仕事あるんやろ?ちゃんと直さんと」
俺は床に膝立ちになってベッドの上に頬杖をつく。
さっき景がやってくれたように、景の髪の毛を少し摘んで毛先へと流した。
「ずっと、隣にいてあげるから。それでええやろ?」
景の顔が近づいてきて、唇にチュッとキスをされた。
「ごめん、本当に。ありがと……」
「ええよ。今、薬と飲み物持ってくるから」
薬は嫌いだ、と散々渋っていたけどなんとか風邪薬を無理やり飲ませると、少ししてから景は緊張の糸が切れたように深く眠り込んでしまった。
最近の仕事の疲れが溜まっていたんだろう。
景の寝顔をたっぷり堪能した後、俺もカーペットの上にゴロンと寝転がった。
昨日寝れなかった分、今頃睡魔が襲ってきて、そのまま目を閉じて眠りについた。
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