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第220話
仰向けで寝る景の体を跨いで膝をつき、両手を景の顔の横にそっとついて、自身の体を支えた。
やってみて気付いたけど、景に触れないようにするにはすごく難しくて無理な体勢だった。
どうしよう。これ以上動けない……。
幸い、景は薬のおかげか眠ったままで、先程と全く変わらず規則正しい呼吸を繰り返している。
あぁでも、人を上から見下ろすって、こんな感じなんだ。
景と立場が逆転したみたいで、また鼓動が早くなる。
景に、知ってほしい。
どれだけ、あなたの事で頭がいっぱいなのかを。
肘を曲げ頭を下ろして、額に優しくキスをする。
景の髪の毛が鼻にかかると、ふわっとタバコとシャボンの香りがした。
「……」
顔がカーっと熱くなる。
馬鹿か、俺。何やってるんだ。
頭ではダメだって分かってるのに、景が起きないのをいい事に、自分の体は何故かどんどんエスカレートする。
景が俺にしてくれたように、額から頬、首筋、ついには耳にまで優しいキスの雨を降らせてしまう。
何度も顔を確認するけど全く起きない。
今度はVネックのTシャツから出ている鎖骨に少しだけ口付けた。
本当は、ここに俺だけの証をつけたい。
そんな事言ったら、景は引いちゃうかもしれないから言わないけど。
「めっちゃ、好きやからな……」
吐息混じりのものすごい小声でそう呟いて、起きてしまう前にそろそろベッドから降りようと体勢を変えようとした時だった。
「もう終わり?」
景の顔をばっと反射的に見る。
しかし景は先程と変わらず目は閉じたまま眠っていた。
なんだ、空耳か、と思いホッとしたのも束の間、彼はゆっくりと目を開けた。
「……」
「いい眺め」
「……!」
ニヤリとする顔を見たらようやく状況を把握できて、一気に耳まで真っ赤になった。
勢いよく起き上がろうとするけど、その前に景の腕が背中に回されてキツく抱きしめられた。
「違うねんっ!これはっ」
「何、可愛い事してくれてるの?寝込みを襲うなんて」
景はものすごく嬉しそうに俺の頭や頬にキスをし始める。
本能のまま行動して、今更ながら物凄く恥ずかしい事をしてしまったと思い、逃げ出したくなった。
「い、いつから起きてっ?」
「んー? 修介がいきなりホッペにキスしてきた時」
「えっ最初から?!寝たふりしてたんか?!」
「なかなか上手でしょう? 僕、一応役者だから」
恥ずかしい。穴があったら入りたい。
「そのまま寝たふりして、修介がどこまでしてくれるのか確かめたかったけど、どうしても君の顔が見たくなっちゃってさ。我慢出来なかった」
痛いくらいに体を抱き竦められる。
景の体に完全に体重を預ける形になると、なんだかゴツゴツと当たる下半身から熱を感じて羞恥でいっぱいになった。
「ごめんね、随分と寝てたみたいだね。薬のおかげで、大分良くなったよ。ありがとう」
「ほんま?それはよかっ……」
いきなり頭の後ろに手を回されて、深く深くキスをされた。
角度を変えながら何度も景の舌が俺の口内を搔きまわす。
「…は……ッ」
「僕も、修介の事がすごく好き。大好き」
景はそう言うとまた激しくキスをして、しばらく貪った後に俺の首筋に唇を移動させて、甘噛みを始めた。
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