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第261話

朝井さんの生暖かい舌の感触に、ぐっと眉根を寄せた。 はやく、指輪を。 焦る気持ちとは裏腹に、なかなか指輪を舌で捕まえる事が出来ない。 多分、朝井さんが舌の上で器用に転がしているんだ。 顔の角度を何度も変えながら、その行為をしていると、嫌でも体がじくじくと熱を持ってくる。 朝井さんはされるがままだったのに、途中から舌を絡ませに来る。 激しく口内をかき回されて、唇の端から唾液が一筋伝った。 どんどんと眦に涙が滲むのが分かった。 「……んん……ッ」 官能的な声を漏らしてしまったところで、ようやく俺の舌の上に指輪が乗った感覚があったから、目を見開いて慌てて唇を離した。 口から指輪が零れて床に落ち、コロコロとドアの方へ転がって行った。 「はぁ、はぁ……」 酸欠状態の中、早く指輪を取りにいかないと、と立ち上がろうとすると、手首を引っ張られてあっという間にソファーに押し倒されてしまった。 朝井さんの顔を見上げると、俺と同様に息が上がっていたから悪寒が走った。 「最高。お前、いつもこんなキス藤澤としてんの?おかげで此処、こんなになっちまったじゃねぇか」 朝井さんは俺の手を自らの中心部分に持っていき、布越しにそこを触らせた。 ビクッと肩が反応する。 やばい。勃ってる、この人。 これから何が始まるのか、安易に予想がついた。 涙の滲む目で朝井さんを睨んで、かぶりを振った。 「やだっ!大声出しますよ!」 「いいよ出して。ここ防音だから外に漏れないし、こっちから何か言わない限り近づかないようにって店員に伝えてあるし」 「……これが、目的だったんですか?」 「恨むなら南を恨めよ。あいつが言ったんだぜ?お前の事、目ェつけてもいいって」 「え?」 「あの時、お前に会ったのは偶然じゃないよ。お前が入ってくのを見て後を付けたんだ。見たら可愛い顔してるから、俺の好きなタイプとは違うけどアリかなって思ったよ。まさか藤澤と付き合ってるだなんて知らなかったけどね。あ、南にお前らの事は言ってないから安心してよ。女の嫉妬は怖ぇからな。あいつに知れたら刺されそうじゃね?」 一瞬、思考が停止した。 南さんが、仕向けた?

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