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第272話 番外編 「する?」
「修介ってさ、ここにホクロあるんだね」
行為を終えて、まだまだ微睡んでいる最中に、ベッドの上で寝転がる景が、隣にいる修介の左胸に手を添えながら言った。
「そうなんよ。生まれた時からあるんよ」
「結構大きめだよね。薄いけど」
「うん。親が心配して、ちゃんと病院で調べてもらったらしいんやけど、普通のホクロみたいで。小さいころ、嫌だったんよねこれ。なんか恥ずかしくて周りに見せないようにしたり。今思えばなんでこんなので悩んでたのかわかんないけど」
「どうでもいい事気にしたりするよね、子供って」
景は頬杖をつきながら指先でその部分を撫でる。
お互い下着だけは身に付けて、下半身だけ薄いシーツに包まれている。
修介は左腕の上に頭を乗せながら、思いついたように言った。
「景は子供の頃から、そんな感じだったん?」
「そんな感じって?」
「頑固で自分勝手で、ドSで、変態」
「どんな子供だよ」
「俺はめっちゃ泣き虫やったで。嫌な事あったり、喧嘩で負けたりするとすぐに泣いてた」
「うん、分かるよ。実は僕も小さい頃はよく泣いてた。恥ずかしがりやで、人前に出るようなタイプじゃなかったし」
「そうなん?全然、想像できへんなぁ……」
「コンプレックスを克服したくて、この世界に挑戦したような感じかな。人って苦手な事から逃げてると、つい逃げ癖がついちゃうからね」
「はぁ、えらいんやねぇ、景は」
景は、指先で修介の肌を撫でるように移動させ、鎖骨の上で止めた。
「ここにもある」
「うん。あと知っとる?ここにもあんねんで?」
修介は左肘を突き出して、内側の肌を見せる。
皺を右手で伸ばすようにすると、そこにはポツンと黒い点が付いていた。
「あっ、そこは気付かなかった」
「こんなとこ、誰も見ぃひんからね」
「……知ってるの、僕だけ?」
「当たり前やろ」
無邪気に笑う修介の顔を見せられた景は、胸が締め付けられてたまらなくなる。
秘密を共有出来たようで嬉しくなり、先ほど行為を終えたばかりなのに意地悪な事を考えてしまう。
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