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第277話

「あぁ、昨日、都内に住む友達ん家に泊まりに行っとって、今帰って来たんよ」 「またまた~。友達の家じゃなくて、彼女さんの家でしょ?ケイさん!」 「……ちゃうで?友達ん家やで?」 「あ、今一瞬間がありましたよー。北村さんって分かりやすいですねぇ」 莉奈は笑ったかと思ったら、また少し黙りこんでしまった。 表情がころころ変わるから、気になった。 実家で何かあったのかな。もしやホームシック? 俺は景やみんなに助けてもらってばっかりだから、俺も何かできる事をしてあげたい。そう思ったから、ちょうど目と鼻の先にあるビルの二階を指さした。 「良かったらあそこでお茶してく?奢ったるで?」 「えっ、いいんですか?」 「うん。ちょうど喉乾いとったから寄ろうと思っとったし。あ、この後なんか用事ある?」 「あ、実は授業ありますけど、奢ってくれるならさぼっちゃいます!出席取らない授業だし」 「ええの?じゃ、行こうか」 話を聞いてあげるくらいだったら、自分にだって出来るだろう。 俺は莉奈のボストンバックを持って、狭い階段を上っていき、店のドアを開けた。 こぢんまりとしたカフェは、俺たち以外に客はいなかった。 二人掛けの席にすわり、メニュー表を眺める。 莉奈はどうしようかなーとルンルンで顔を傾けると、わざとおちゃらけた調子で俺に言った。 「何頼もうかなー。北村さんの奢りだもんなー。あ、スペシャルパフェ美味しそうだな~!」 「はっ?1200円もするやんか!無理無理!他のにしとき」 「えー、何でも奢るって言ったじゃないですか~」 「何でもとは言っとらんで!500円以内!」 「えーケチですねぇ」 「学生は貧乏なんや」 景と違って、やりくりが大変なのだ。 莉奈は唇を尖らせながらメニュー表と睨めっこしている。 結局二人で無難にアイスコーヒーを頼む事にした。 店員さんが行ってしまうと、また先ほどのように莉奈の表情が暗くなった気がしたけど、かと思いきやまたニコッとして、今日の天気や大学の授業についてを話し始めた。 なんか無理してるなぁ。 直感でそう思ったから、会話が一瞬途切れたところで本題に入った。 「なぁ莉奈、さっきっから無理してへん?実家帰っとったんやろ?なんかあったんか?」 「え、何にもないですよー。元気だし!もりもりー」 莉奈は両手をグーにして顔の横で可愛げに振るけど、俺は頬杖を付いてあえて冷たい視線を送った。 莉奈は俺の視線に俯き、ゆっくりと手を下ろして困ったように笑う。 「北村さん、彼女さんと付き合ってから喧嘩した事ありますか?」 「へ?喧嘩?」 その発言で安易に予想がついた。 莉奈はきっと、彼氏と喧嘩したから落ち込んでいるんだろう。 いいアドバイスは出来るか分からないけど、話は聞いてあげられそうだ。

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