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第284話
夜、バイトを終えてアパートに帰ってきてから景に電話をしてみたけれど出なかった。
きっと仕事中なんだろう。
もうすぐ景の誕生日だから、その日に会えるか聞いてみたかったんだけど。
俺はとりあえず風呂に入る事にした。
湯船につかりながら、目を閉じて考える。
プレゼント、何をあげよう。
ネットで喜びそうな物を調べたりもしたけど、景は俺とは住む世界が違うし、俺なんかが選んだ物でちゃんと喜んでくれるんだろうか。
がっかりはさせたくないし、かといって高額な物を買えるわけでもないし。
顔の半分をお湯につけてブクブクと口から泡を出しながら考えを巡らせていると、浴室の外から着信音が聞こえてきたから、急いで湯船から出て、ろくに身体も拭かずにそのままスマホを取り上げた。
「もしもしっ!」
『修介。ごめんね電話出れなくて。今日仕事の仲間達と飲んでて、今帰って来たんだ。ふふ、なんだか慌てて出たみたいだけど、どうしたの?』
「あ、今風呂入ってたんよ!切れてしまうかと思ったけど、間一髪やった」
『え、ごめんね、タイミング悪かったね。でもちゃんと取ってくれたんだ。ありがとう。どう?手首、まだ痛む?』
「ううん!もうこの通り……」
俺は無意識に手首をブラブラと振っていまい、後悔した。
あれから数日経ったけど、実はまだ少しだけ痛みがあり、完全には治ってはいなかったのだ。
じわじわくる痛みに無言で耐える。
しかも折角手を振ってもこの状況、景には見えてないし。あほか。
少しだけ涙目になって、景に同じツッコミを入れられた後、今度仕事で長期ロケに行くんだという事を教えてくれた。
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