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第297話 side景

僕がそう言うと、詩音は「え!」と言ったまま固まってしまった。 きっと僕が男と付き合っている事実を受け入れられないのだろう。 詩音は驚いたように瞬きを多くした。 「それ、本当なんですか?なんではぐらかしたりとか、隠したりしないんですか?」 「え? 隠す必要無いかなっていうか、事実だし」 「えーっ!全然知りませんでしたっ!そうなんですね……いや、それもちょっと驚きですけど、今驚いてるのは、藤澤さんが俺にそうやって普通に話してるって事で……もし俺が周りにバラしたりして、大変なことにでもなったらどうするんですか?」 バラす? 言いたければいくらでも言えばいいけれど…… 「だって、詩音はそんな事する筈無いでしょう?」 「えっ!」 また詩音は固まって動かなくなってしまった。そのおかしな反応に耐えられなくて僕は吹き出してしまう。 えっ、って。修介じゃないんだから。 「何?どうしたの詩音」 「それって、俺の事信用してくれてるって事ですか?」 詩音はどうやら感激しているようだ。 修介と付き合う前、修介から『信頼してるから』と言われた事をいつまでも忘れていない。 自分の好きな人にそう思われていたら、誰だって嬉しいだろう。 詩音は、僕の事を追いかけてこの世界にやって来た。 こんな未熟な僕を目標にして日々を一生懸命に過ごしてくれている。 信用や信頼なんて、もうとっくにしている。 「うん。詩音の事、すごく信用してるよ。だから修介と付き合ってるって事もいつかは言うだろうなとは思ってたんだ。今度詩音にもちゃんと紹介するよ。僕と同い年なんだ」 「……藤澤さん~!おれ物凄く感激しています!あ、良かったらその彼女……じゃなかった、彼氏さんの話、いろいろと聞かせて下さい!」 詩音はじんわりと滲んだ目で僕を見た。 全く。泣き虫なところまで修介にそっくりだな。 でも笑うと片えくぼが出来るのは僕に似ているし。 僕と修介を合わせて二で割ったような詩音に、修介と会えない寂しさを埋めるように話し続けた。 詩音は僕の事を軽蔑などしなかった。 自分はどんな藤澤さんでも、敬う気持ちは一生変わりません、とも言ってくれた。 結局、肝心の演技の話はまた明日となった。 その場で別れて部屋に戻り、ベッドへと入る。 早く、彼と二人で眠りにつきたいな。 そう思いながら、僕は意識を手放した。

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