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第299話

七月二日、景の誕生日。 俺は朝からソワソワしていた。 今日はゼミがある日だから大学に向かわなければならない。 そしてその後は、期限が迫っている会社のエントリーシートの作成と、ゼミで出されている課題を仕上げる予定で、景に劣らずなかなかのハードスケジュールだ。 大学を出た後、予約のケーキを受け取ってから、今日引き渡し予定の景のプレゼントを貰って、マンションに向かう。 ケーキは、前に景に連れていってもらったカフェのロールケーキを注文した。 店主の慶子さんは景の事をよく知っているし、久し振りに会いたかったっていうのもある。 案の定、数日前に予約をしにいったら凄く喜んでくれた。   「サービスしちゃうわね!」なんて言いながらちょっと安くしてくれたけど…… 予約し終えてから、生ものだし、やっぱり景の家の近くのケーキ屋で頼めば良かったか、と一瞬後悔した。 まぁ、慶子さんのところで頼んだって言えば、景だって喜んでくれるか。そう開き直った。 時間には余裕を持て。 そんな当たり前の事分かっていたはずなのに、俺はこの日、見事にやらかしてしまう。 一つがうまくいかないと、それに引っ張られるように運が悪くなっていくのを止められなくなっていった。 まるでドミノ倒しのように、一難去ってまた一難である。 初めのミスは、大学で。 来週提出予定の課題を終わらせるためにパソコン室に向かった。 きりのいいところまで終わらせてしまおうと、躍起になってキーボードを叩いていると、隣に座っていた秀明が俺に声を掛ける。 「ねー修介。さっき何時にここ出るって言ってたっけ? 時間大丈夫なの?」 その言葉にハッとして時計を見ると、大学を出なければならない時間を大幅に過ぎていた。 「わーっ!秀明のアホ!なんでもっと早く教えてくれへんかったん!」 俺は急いで散らばっていたプリント類をかき集めてリュックに仕舞う。 「人のせいにしてんじゃねーよ!俺も集中してて気付かなくて。今日彼氏ん家行くんでしょ?また飲みましょうって宜しく言っておいてね!」 「あ、修介帰るの? 藤澤さんに宜しく。また連絡するから」 晴人は慌てる俺を見向きもせず、カタカタとキーボードを鳴らしながら言う。 そんな二人に適当に挨拶を済ませ、アパートへと向かい、荷物を置いてから景の指輪を嵌めて、慶子さんのカフェに向かった。

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