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第303話
ゆきちゃんと莉奈と三人で、あの時の駅前のカフェに来た。
向かい合わせに俺とゆきちゃんが座り、90度の角度の位置に莉奈が座っている。
ゆきちゃんは足を組みながら一人リラックスした様子で、先ほど頼んだアイスコーヒーを待っている。
俺と莉奈も待っていることに変わりはないが、どちらも背筋を伸ばし、膝の上で拳を作りながらゆきちゃんの様子を伺っていた。
店員さんはこの状況、どう思っているのだろうか。
はたから見れば、まるで俺が莉奈に手を出したのがゆきちゃんにバレて、修羅場なんだろうなとか思われてそう。
いや、もしかしたらゆきちゃんは誤解をしていて、本当にそう思っているのかもしれない。
なぜ俺を連れて来たのか疑問過ぎて、これから何を言われるのか内心ひやひやしている。
「西村くんってさー、大学生なの?」
さっきからわざと言っているな。
でもいちいち言うのも気が引けるから、あえて突っ込まずに顔を上げた。
「高宮さんと同じ大学の、四年です」
「えっ!俺より上なの?童顔ってよく言われない?」
「言われます……」
確かゆきちゃんは莉奈の一つ上だから大学二年生。
そして俺が年上だと知ったのにあえて崩さないその態度。
うん。見た目通りで別に驚かない。
「俺より下だと思ってた。てゆーかいきなり確信ついちゃうけど、莉奈の事好きなわけ?」
あぁ、やっぱり。
さっき俺に注意されたのが気にくわないんだ。
何か言おうとしたけど、その前に莉奈が先に口を出した。
「違うよ。北村さん、ちゃんと彼女いるし。私の事心配してくれてたんだよ。ゆきちゃん、たまに怒ると怖いから、どうしたらいいのかなって相談してて」
「はぁ?おまえ……」
「お待たせしました」
ゆきちゃんの言葉を遮るように、店員さんがアイスコーヒーを持って来てくれた。
ふぅ。ナイスタイミング店員さん。
無言でアイスコーヒーを飲みながら、今度は俺から話しかけた。
「あの、誤解されてるみたいですが、高宮さんとは普通の友達です。前に高宮さんが怪我をして腕に包帯を巻いていたので、心配になって話を聞いただけです」
「ふーん」
ゆきちゃんは頬杖をついて顔を近づけてくる。
「だからさっき、『やめてほしいって思ってるみたいなので』って言ってたわけ?相談とか言って俺の知らないところで、俺の事コソコソそうやって話してたわけ?」
「いや、コソコソっていうか……」
ゆきちゃんのその細い目にぎろりと睨みつけられると、全身が緊張してしまう。
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