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第319話 side景

ぱたん、とドアが閉まったのを確認して、溜息を吐いた。 修介からの贈り物を凝視して、指先で表面をなぞる。 黒のレザー。このブランド。 ポケットからライターを取り出す。 詩音からプレゼントされたこれと全く一緒だ。こんな事ってあるか? 違った物だったらリアクションに困らなかった。 素直に喜べたはずなのに。 詩音からもらったライターは、すでに僕の手のひらに馴染んで来て、レザーの匂いや堅さもだいぶ変わってきている。 正直に言おうか。後輩から全く一緒の物をプレゼントされて、今使っているんだって。 修介はそれを聞いたらどう思うだろう。 僕の為に選んでくれたのに、きっと落ち込んでしまうんじゃないか? 詩音には悪いけど、これは家用にして、持ち歩くのは修介から貰ったこっちにしようか…… そんなことをぐるぐると考えていた矢先、テーブルの上に置かれていた修介のスマホの画面が光って、振動を始めた。 何気なくふと見ると、知らない女の子の名前だったからドキッとした。 (高宮、莉奈) 大学の友達だろうか。 その文字を見つめてからドアに視線を送り、電話が来ている事を伝えた方がいいか迷った。 随分と、長い着信だ。まだ鳴り止まない。 修介に何の用事だろうか。 仲良くしてる女の子がいるなんて、修介の口から聞いた事は無い。 誰なんだろう、この子。 修介がリビングのドアを開けたタイミングでようやく静かになった。 テーブルの上にプレゼントされた箱を置き、スマホに視線を送って合図した。 「鳴ってたみたいだよ、電話」 「え?」 ペタペタとスリッパの底を鳴らしてスマホを手に取って確認している。 僕は修介に視線を送った。どんな表情をしているのか、確認するかのように。 ……何故こんな事している?自分の行動に恥ずかしくなって、僕はわざと視線を逸らした。

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