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第324話 side景

最後の言葉を聞いた途端、頭にカッと血が上った気がした。 僕は修介に出来る限り、包み隠さず話して来たつもりだ。 不安にさせないように、きちんと本音を伝えてきた。 でも、君は違うんだね? そんな事言うんだったら、他にもあるんだろうね、僕の知らない事が。 この黒くよどんだ感情を爆発させないように、いつもの何倍も気を落ち着かせるのに必死だった。 「――修介はいつもそうだよね」 「え?」 「肝心な事は僕に言わないでいるじゃない」 「……だって、景、忙しいんやし……」 「忙しい忙しいって何なの? 僕、電話で修介の話聞けないくらい忙しくしてるつもりはないよ?」 僕がそう言うと、修介は負けじと反論した。 「じゃあっ、景は俺にすぐに言うてるん?景やっていろんな女優さんと飲んだりして、写真とか撮られまくってるくせに、なんで俺ばっかり責めるんよ!」 「それは仕事の付き合いだし、付き合ってからは毎回ちゃんと事前に言ってあるでしょ。他にも大勢の人がいて、二人きりじゃないし……修介は事後報告が多すぎるんだよ」 修介は唇を噛んでジッとこちらを睨んでくる。 僕も視線を一ミリも離さない。 何かを考えているようだけど、修介の口からは何も出てこない。 僕にはちっとも理解出来ないよ。 ちゃんと、言葉で伝えてくれなくちゃ分からないよ――…… 僕を睨んでいた修介だったけど、しばらくしてからふっと目の力を抜いて視線を外した。 「ちょっと、出掛けてくる……」 修介はスマホを握りしめてソファーから立ち上がり、自分のバックを持って逃げるように部屋から出て行った。 僕はその後ろ姿を引き止める事が出来ずに、ただ目で追う事しか出来なかった。

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