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第331話

それから数時間後。 着信音が広いリビングに鳴り響いた。 (あぁ……今日は何でこんなに電話多いんや) 目の前のテーブルで震えるスマホを取らないでいたら、景にふふっと笑われた。 「出なくていいの?」 「ん、いい……」 ソファーの上で、景が露わになった俺の首筋を唇で優しく咥えている。 電話が来たのは、お酒を飲みながら軽く食事をして、気分が良くなって俺が景にもたれかかって甘えている時だった。 テーブルの上に置かれたそれは、この静寂な部屋にやたらと響き渡って、気にしないようにしても、どうしても気持ちが削がれてしまう。 景もそれは同じだったようだ。 今度は唇に甘いキスをくれていた景だったけれど一旦中断して体を離し、俺のスマホを掴み上げた。 そして画面をジッと見つめる。 景は先程の甘い顔から一転、途端に顔をしかめてふて腐れたような表情で、薄目で俺に視線を移した。 「高宮莉奈ちゃんだけど」 「……」 景もその事は謝ってくれたし、もう責められる事は無くなったけど、それでもやっぱり顔に出てるって事はいい気分って訳では絶対無いんだろう。 何も発せなくなってしまった俺に、景はニヤリとした。 「いいよ本当に、気を遣わなくて。ほら、全然鳴り止まないし、修介に急用なんじゃないの?出てもいいよ?」 景はふて腐れながらも、声は穏やかで優しかったから少し安堵する。 確かに、今までこんなに鳴り続けた事は無かった。 もしかしたら、今彼氏といてまた面倒な事になっているから助けてほしいとか? 俺は心中穏やかではないが、景の優しさに甘えて電話に出る事にした。 「もしもし?」 景の隣で出たのは間違っていた。 電話に出た途端、肩を抱き寄せ、俺の耳を唇で弄り始めたのだ。 「〜〜〜〜りな、どうしたんッ?」 慌てて景の体を押して、楽しそうに微笑む彼を睨んで反抗する。 莉奈は少ししてから声を発した。 『あっ、すいません。今、もしかして彼女さんと一緒ですか?』 「えっ!まぁ、うん」 げ、もしかして、俺の今の変な声のせいで見抜かれてしまったのか? また何か揶揄われるな、と覚悟していたけど、莉奈の反応は俺の予想とは違っていた。 『あ、じゃあ、いいです!またバイトで!失礼します!』 そう言うと一方的に電話は切れてしまった。 俺はキョトンとしながら画面を見つめる。 「ん?なんやったんや?」 「切れちゃったの?」 「彼女さんと一緒にいるならいいですって」 「ふーん」

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