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第337話 side景
でも、いろんな僕の考えは玄関のドアを見てあっけなく崩れ去った。
ちゃんと閉まりきっておらず、少し隙間があいてそこから中の光が漏れていた。
まったく。修介らしいといえば修介らしい。
鍵も掛けず、それにドアもちゃんと閉まったかどうか確認もしないなんて。
不用心だなと思いつつ、手は自然とドアノブを掴んでいた。
ドアノブを引いて中をこっそり覗き込んだ僕の目に飛び込んできたのは、修介がいつも履いているスニーカーと、ヒールのあるパンプスだった。
見た瞬間、妙に背筋が寒くなった気がした。
そして僕を追い詰めるかのように、部屋の中から聞こえてくる、女性の声。
どこか諭すような話し方だった。
僕は一気に嫌悪感に苛まれながらも身体を中に入れて、リビングの奥を覗き込む。
修介が、ソファーに座る女の子の手を握りながら見上げている。
そしてその女の子は、泣いている。
瞬時に理解した。
あれは、高宮莉奈ちゃんだ、と。
「――そっか。ありがとう。こんな俺を好きになってくれたんやね。俺告白なんてされるん慣れてないからどう言ったらええのか分からんのやけど」
「私じゃだめですか?」
頭が真っ白になった。
何、その会話。
修介、何笑っているの?
もしかして、莉奈ちゃんに告白でもされて嬉しい、とか?
随分と楽しそうだね。恋愛ごっこ?僕の知らないところで。
やっぱり君は、肝心な事は何も言わないでいるんだね。
修介は莉奈ちゃんに何か言っているようだけどそんなのはもう耳に入ってこなかった。
紙袋の取っ手を千切れそうになるくらいギュッと掴んで、僕は自分でもビックリするぐらい冷たく固い声を出した。
「お取り込み中悪いんだけどさ」
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