345 / 454
第345話 side詩音
[お疲れ。明日の夜、空いてる?]
夜、仕事を終えて遅めの夕食を取っていた時、藤澤さんからメッセージが入った。
待ってましたとばかりに、[空いてます!]と送信すると、藤澤さんから返信が来た。
[明日、僕のマンションに桜理が来るんだ。良かったら詩音もどう?]
[ぜひ!]
[じゃあ、待ってるから。よろしくね]
その後、マンションの地図が添付されて送られてきた。
やった!と心の中でガッツポーズをする。
ずっとお邪魔したいと思っていたから。
実は今まで何度か誘われていたけど、タイミングが合わなくてお預けを食らっていた。
映画の撮影も終盤に差し掛かり、二人でのシーンはほぼ撮り終えてしまったから、ここ三週間程は会えていなかった。
でも最近、藤澤さんからのお誘いが以前に比べて随分と多くなった。
なかなか都合が合わなくて断ってばかりいたけど、ようやく藤澤さんと会える事になって嬉しかった。
次の日、雑誌の撮影とテレビ収録の仕事をこなしてから、藤澤さんのマンションへ向かった。
教えてもらった部屋番号を押してインターホンを鳴らし、エントランスを抜けてエレベーターに乗り、藤澤さんの部屋の前にたどり着いた。
ドアが開くと、ニッコリと笑った藤澤さんが顔を覗かせた。
「久し振りだね。道、迷わなかった?」
「あ!はい。大丈夫でした……」
「桜理はまだ来てないんだけど、ゆっくりしてって」
「あ、はい」
(あれ?)
三週間振りに見る藤澤さんは笑顔で出迎えてくれたけど、その笑い方に少しだけ違和感を感じた。
なんでだろう。
どこが違うのかはハッキリと言えるわけではないけど、なんだかいつもの藤澤さんじゃないみたいだった。
藤澤さんは、どうぞ、とスリッパを出してくれた。
その七分袖のカットソーから覗かせた手首が、やけに細く見えた。
お礼を言って履き替えて、藤澤さんの後に続いてリビングの方へ向かった。
後ろ姿も見てみると、腰回りや脚が随分と細くなった気がした。
元から細かったけど、なんだか拍車がかかったみたいだ。
仕事、ハードなのかな……。
ちょっと心配になったけど、こうして俺を誘ってきてくれたんだからきっと大丈夫だよな。
そう自分に納得させた。
ともだちにシェアしよう!