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第345話 side詩音

[お疲れ。明日の夜、空いてる?] 夜、仕事を終えて遅めの夕食を取っていた時、藤澤さんからメッセージが入った。 待ってましたとばかりに、[空いてます!]と送信すると、藤澤さんから返信が来た。 [明日、僕のマンションに桜理が来るんだ。良かったら詩音もどう?] [ぜひ!] [じゃあ、待ってるから。よろしくね] その後、マンションの地図が添付されて送られてきた。 やった!と心の中でガッツポーズをする。 ずっとお邪魔したいと思っていたから。 実は今まで何度か誘われていたけど、タイミングが合わなくてお預けを食らっていた。 映画の撮影も終盤に差し掛かり、二人でのシーンはほぼ撮り終えてしまったから、ここ三週間程は会えていなかった。 でも最近、藤澤さんからのお誘いが以前に比べて随分と多くなった。 なかなか都合が合わなくて断ってばかりいたけど、ようやく藤澤さんと会える事になって嬉しかった。 次の日、雑誌の撮影とテレビ収録の仕事をこなしてから、藤澤さんのマンションへ向かった。 教えてもらった部屋番号を押してインターホンを鳴らし、エントランスを抜けてエレベーターに乗り、藤澤さんの部屋の前にたどり着いた。 ドアが開くと、ニッコリと笑った藤澤さんが顔を覗かせた。 「久し振りだね。道、迷わなかった?」 「あ!はい。大丈夫でした……」 「桜理はまだ来てないんだけど、ゆっくりしてって」 「あ、はい」 (あれ?) 三週間振りに見る藤澤さんは笑顔で出迎えてくれたけど、その笑い方に少しだけ違和感を感じた。 なんでだろう。 どこが違うのかはハッキリと言えるわけではないけど、なんだかいつもの藤澤さんじゃないみたいだった。 藤澤さんは、どうぞ、とスリッパを出してくれた。 その七分袖のカットソーから覗かせた手首が、やけに細く見えた。 お礼を言って履き替えて、藤澤さんの後に続いてリビングの方へ向かった。 後ろ姿も見てみると、腰回りや脚が随分と細くなった気がした。 元から細かったけど、なんだか拍車がかかったみたいだ。 仕事、ハードなのかな……。 ちょっと心配になったけど、こうして俺を誘ってきてくれたんだからきっと大丈夫だよな。 そう自分に納得させた。

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