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第381話

俺は自分の席から景とタケさんを見て、深く溜息を吐いた。 二人が何やら揉めていて、周りが景をなだめていた。 あの調子だと、タケさんがあの事を謝ったんだろうなと安易に想像がつく。 タケさんに申し訳無いなぁと思っていたら、カウンターに座っていた詩音くんが、焼酎を片手にこちらにやってきた。 「修介さん、飲みます?」 「あ、ありがと」 「藤澤さん、どうしちゃったんですか?あれ」 「ん? あぁ、気にせんといて。ちょっとした発作やと思うから」 「……藤澤さんって、本当に修介さんの事しか見てないですよね」 「え、そ、そうかな?」 「そりゃあもう。藤澤さん、寝ながら修介さんの名前呼びましたから。きっと夢の中でも修介さんを想ってたんでしょうね」 そんな事があったなんて。 恥ずかしいけれど嬉しくて、顔が熱くなってしまう。 「俺、あの時思ったんです。あぁ、やっぱり俺は眼中にないだろうなぁって。藤澤さん、修介さんの事、生意気で自分勝手で頑固者で困った奴って言ってましたけど、やっぱり藤澤さんは修介さん一筋なんですよね!」 俺は詩音くんのチクチク刺さる言い方に嫌悪感を覚える。 「へ、へぇー。景、他にはなんか言うとった?」 「え? 他はまぁ、俺の方が聞き分け良くて要領良くて頭もいいけど、僕には修介だけだって……あっ、すいません。そういうつもりじゃないんです!」 「……」 俺は景の方を睨みつける。 それに気付いた景はなぜか俺に向かってウインクをした。 無性にイラッとくる顔だった。 「なんやねんあの変態、もう知らへんで!」 「あぁ、違うんです!藤澤さんと仲良くして下さい!」 「おい修介、そんな弱ぇの飲んでねーで、コレ飲んでみろよ!すげー旨いぜ!」 もう酔ってるであろう桜理さんが、一升瓶を片手にニコリとしながら中身をグラスに注いで、俺に手渡した。 「あ、ありがとうございます!」 景にはちょっとイラっとしたけど、こうやって楽しく酒を飲むのは随分と久し振りだったから、俺は桜理さんに乗せられるがまま、液体を体の中に流し込んだ。 何杯飲んだか分からない。 その結果俺は……酔った。

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