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第384話 side景
僕は店の出入り口から少し離れた喫煙所でタバコを吸っていた。
喫煙者が自然と集まり、談笑をしている。
でも、なかなか店から出てこない修介の事が気がかりだった。
もしかして吐いているのだろうか?と思っていた頃。
店から出て、こちらに歩いてくる友人のヒロを見つけたから声を掛けた。
「あ、ヒロ、修介まだ中にいた?」
「あれっ!?景、お前何してんのこんなとこで」
「何って、修介待ってるんだけど」
「修介ならさっき、タケと一緒にタクシー乗って帰ってったぜ? てっきり景もそれに乗ってるのかと思ってた」
「……は?」
思わず煙草をポロリと落としそうになる。
確かに、先ほど何台かタクシーが迎えに来ていて何人か乗り込んで行くのを見たけど、まさかその中に修介もいたのか?
僕が此処で待っていると言ったのに、君は一体何処へ行ったんだ?
「タケと二人で帰っちゃったの?」
「うーん、多分五、六人でいたかなぁ……桜理もいたのは見えたけど、他のヤツは後ろ姿だったから後は分かんない」
何故、そういう事になった?
僕はタバコを灰皿で揉み消して、急いでスマホを取り出し電話を掛けてみた。
しかし、待てど暮らせど修介は電話に出ない。
何度か掛け直したけれど出る気配がない為、今度はタケに電話を掛ける。出ない。
よし、桜理に電話しよう。
……出ない。
フツフツと怒りが湧いてくる。
「しゅう、すけー……?」
いつも以上に積極的だったから、これから家にお持ち帰りして目一杯可愛がってやろうと思っていたのに、何故そんな裏切り行為をする……?
スマホをヒビが入りそうなくらいに強く握る。
周りはそんな僕を見てブルブルと震えていた。
「まぁ、さ!なんか事情があるんじゃねーの?そうだ!酔った修介を介抱する為に、家まで送ってったとか?」
僕はヒロを薄目でギロリと睨みつけ、無言の圧力をかけた。
「なーんちゃって、そんな訳ないよねぇ!」
ヒロは、ハハハ……と乾いた笑いで気を遣って和ませている。
八つ当たりしてもしょうがないか、と気を持ち直して深く溜息を吐いた。
僕が今日修介と帰るというのはみんな知っていたし、タケも桜理も相当酔っていたから、悪ノリで修介を連れて行ってしまったのかもしれない。
きっと途中で気付いて、僕のマンションに帰って来てくれるだろう。
そう思った僕はスマホで文字を打って、送信した。
《今どこにいるの?電話して》
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